【作品に込められた二律背反】amazarashi新譜「アンチノミー」を解剖レビュー。

2023年1月15日にリリースされた、amazarashiの新譜「アンチノミー」。

NieR:Automataのゲーム版主題歌『命にふさわしい』から続投となった今回の新曲は、アニメ「NieR:Automata Ver1.1a」のエンディングに起用されています。

当記事は、「アンチノミー」の歌詞・秋田ひろむコメント・楽曲内容を解剖レビューし、ゲームをプレイし漫画版も読んでいた筆者が歌詞に込められた想いを読み解きます。

 

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『NieR:Automata Ver1.1a』エンディングムービー

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アンチノミー 歌詞

感情は持たないでください それがあってはこの先 きっと辛すぎる
人を愛さないでください 守るものが弱さになる きっと後悔するでしょう


嬉しくて笑い、悲しくて泣き 初めからそう設計されてんのかな
だけど痛いと泣く心を 僕は疑えやしないよ

意味を捨て意志をとれ 生き延びて 生き延びて 息をするんだ
「すぐ帰る」が遺言 アンチノミー アンチノミー 心のバグだ
人として憤れ 勘定を踏みにじる全てへ
機械仕掛けの涙 それに震えるこの心は誰のもの

自ら選択しないでください 革新によって安寧は揺らいでしまうので
情けはかけないでください 白と黒の間の無限の色彩に惑うでしょう

世界は数多の間、繰り返す 返答だけならば機械にだってできる
僕だけの迷いこそが 人の証左となるなら

意味を捨て意志をとれ 生き延びて 生き延びて 息をするんだ
自分殺し生きている アンチノミー アンチノミー 心のバグだ
人として憤れ 勘定を踏みにじる全てへ
機械仕掛けの涙 それに震えるこの心は誰のもの

治世は持たないでください それがあっては真実を知ってしまいます
君と僕の違いは何? 痛み喜びもこんなに似てる
似てるから求め合う? 憎しみ合う?
そういえば、この憎しみもよく似てる

涙声 離せない あなたの手 あなたの手 まだ温いんだ
屍として生まれ アンチノミー アンチノミー 世界のバグだ
人として憤れ 勘定を踏みにじる全てへ
機械仕掛けの涙 それに震えるこの心は誰のもの

by amazarashi アンチノミー

秋田ひろむ コメント

以前、ゲーム『NieR:Automata』とコラボレーションさせて頂いたのですが、それからまた時を経まして、アニメ『NieR:Automata Ver1.1a』のエンディングを担当する機会をいただきました。

大変嬉しいです。ありがとうございます。僕自身はニーアシリーズの一ファンでしかないのですが、再び頂いた光栄な役目ですのでニーア オートマタのエンディングにふさわしい曲を精一杯イメージして、形にしましたので気に入って貰えることを願うばかりです。

信じていたものが一瞬でひっくり返るような、良かれと信じたものが相手を傷つけてしまうような、そういった心の葛藤を歌に込めて『アンチノミー』と名付けました。

アンドロイドや機械生命体が感じる痛みや憎しみ、そして愛情が存在するゆえの迷いなどを、アニメの一部として伝えられたら僕らの役目は果たせるのではないかと思っています。どうぞよろしくお願いします。

by amazarashi 秋田ひろむ

 

 

NieR:Automata(ニーア・オートマタ)とは

by NieR:Automata

スクウェア・エニックスがおくるニーアシリーズの一つです。

物語は、「ニーア ゲシュタルト/レプリカント」から数千年後、地球外生命体の侵略によって人類が月へと追われた世界が舞台の作品です。

地球の奪還を目指す人類が製造したアンドロイド兵士と、異星人が製造した兵器による代理戦争が勃発している星を舞台に、主人公達アンドロイドの生まれた理由が描かれます。

2022年11月には累計700万本を突破した本作。

舞台化や漫画化によって、物語は正史ではない別世界線へと分岐しています。

2023年に新しくアニメ化された「NieR:Automata Ver1.1a」は、リリィがレジスタンスの指揮を務めていることから、原作の世界線ではなく漫画版ヨルハの分岐世界線である説が浮上している。

歌詞感想

アンドロイドとしての葛藤が込められた歌詞

「ニーア・オートマタ」は、ゲームだけでもエンディングがA~Eまでと長いIFルートに分岐している作品です。その過程で、アンドロイドが戦闘機械以外の感情(心)を抱き、葛藤する様が描かれています。

命令によってただ武器を取るアンドロイドから、意志を持って動くアンドロイドへと移り変わっていく姿がアンチノミーの歌詞にも投影されています。しかし、アンドロイドが独自に意志を持つことは欠陥でもあるため、悩み葛藤もしているんですね。

進化ととるべきか、プログラムのバグととるべきか。

アンチノミーの歌詞は、心を持つことが不幸しかない世界観を踏襲していますし、その逆に心を持つことで生まれる疑問やすべての感情を肯定しているようにも思います。

白と黒の間―

ニーアの世界には、2014年に「ゲシュタルト計画」という人類救済計画が発案されます。

これは、致死率100%となる白塩化症候群から逃れるために魂と肉体を分離して保管するコールドスリープを行う計画で、人類滅亡の機器を脱するための重要な計画でした。

その計画で登場するのが「白の書」と「黒の書」。この2つの魔導書を合わせることで魂を肉体に戻すことができるという仕組みです。しかし、計画を遂行するために必要だったレプリカント体という器の人間 (ニーア)が暴走したことで、白の書と黒の書が消失してしまう結果となりました。

これにより、人類保管計画である「ゲシュタルト計画」は頓挫し、人類は滅亡します。

歌詞にある「白と黒の間の無限の色彩に惑うでしょう」という一文は、上記に記載した作品上の設定と、 選択肢が増えることによって悩み足が止まるという状況が合わさった歌詞なんです。

白と黒というのは「ニーアシリーズ」にとって重要な色で、主人公達の容姿にも表れています。白い髪(RGB:255,255,255)と黒い服(RGB:0,0,0)に身を包んだアンドロイドが、他の色を見つけるために奔走するというテーマも隠されているのです。

世界は数多の間、繰り返す―

「世界は数多の間、繰り返す」という歌詞があります。これは、ニーア・オートマタの世界が多くの平行世界で構成されているため、その意味合いで歌詞に投影されているのではないかと感じました。

というのも、オートマタはゲーム以外にも舞台・小説・音楽劇・漫画で異なるストーリ展開を見せています。ストーリー展開もすべて違いますし、生存するキャラクターにも違いがあります。

しかし、そのすべてにおいていえるのは「結末は一つに収束する」ということ。

違う選択をしても目先の未来しか変わらず、最終的に辿り着く未来を変えることはできない。このテーマは原作者のヨコオさんが提唱しています。

すべてが「アンチノミー」に収束する―

楽曲タイトルになっている「アンチノミー」は、二律背反という意味があります。

これは、簡潔に言えば矛盾のことであり、合理性はあるがその延長線上に真理を確立することができない定説について説いた言葉です。

人間とアンドロイドが心を持つこと、時間と空間、普遍的な自由…

このすべてが二律背反の意味として捉えることができるため、秋田ひろむが本楽曲に「アンチノミー」と名付けたのも頷けます。

 

 

メロディ感想

秋田ひろむの得意とする伸びのあるメロディ構成で、スッと落ちてくる音に胸を打たれました。特別インパクトがある楽曲ではないですが、メロディラインはニーアの世界観にマッチしているため総合評価は高い印象です。

サビの裏声を出す部分というのも、最近の秋田ひろむが好むアクセントです。耳に残りますし楽曲の雰囲気をグッと深めるアクセントになります。

 

さらに、注目すべきところは豊川真奈美さんのコーラスです。

サビの最後に豊川さんが「ヨルハ」とコーラスしているんです。

作品の中で重点的に描かれる「ヨルハ計画」。これは、中盤で明かされる衝撃的な計画内容の一つですが、そのヨルハを豊川さんが優しくコーラスしてるんです。

芸術点の高い魅せ方で興奮しました。

作品とのタイアップに対して、丁寧にアンサーを返しているのを全身で感じます。

耳からインプットして全身で感じるというのは素晴らしいことです。

現在、漫画版のNieR:Automata作品で「ヨルハ」という作品が描かれているため、アニメストーリーは漫画版ヨルハからの分岐だと思われます。

 

ゲーム版主題歌『命にふさわしい』も、NieR:Automataのアンサーソングとなっているため再度チェックしてみるのも良いかもしれませんね。

 

おわりに

ということで、今回はamazarashiの「アンチノミー」について深堀しました。

歌詞・メロディすべてが「NieR:Automata Ver1.1a」に対するアンサーとなっているため、原作を知ると更に強く胸打たれるものでした。

アニメ版「NieR:Automata Ver1.1a」は、1月7日からオンエア中です。

今まで語られたどの世界線とも違うストーリーとなっています、原作を知らなくてもアニメのストーリーを主軸として楽しむことができるため、ぜひ視聴してみてください。

筆者は観るタイミングが遅れそうですが、追って一気見したいと思います。

 

今回の記事は、以上になります。

長らくお付き合いありがとうございました。

 

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