【楽曲&MV配信開始】指一本で流してはいけない事実。amazarashi新曲『スワイプ』レビュー

2023年4月26日0時からamazarashiの新曲『スワイプ』が配信開始となりました。

映画『ヴィレッジ』とのコラボレーションソングに起用された本楽曲。

無意識のうちに誰もが加害者になりえる現代社会を映した作品から、秋田ひろむがどのような音を紡ぎだしたのか読み解きます。

3度目のタッグとなった秋田ひろむ、横浜流星、藤井道人監督作品に、新宮良平監督を招いて生み出したMVについてもその魅力に迫ります。

本記事は、『スワイプ』を全力で読み解くレビュー記事です。

 

>>映画『ヴィレッジ』についても解説している前記事はこちらから

配信曲『スワイプ』

MV

※ 2023年4月26日21時からプレミア公開が開始されました。

歌詞

やくざバイトで密漁 溺れて死んだ上級生

昔はやればできる子 憑りつかれたなら手遅れ

自殺者は年何万人 多重債務者の行く先

孤独死は何パーセント 記事では見えない想いないがしろ

ガスってる山景、薄情パッキングした幾つかの

思い出は捨てる 故郷の名も無き焦点の屑かご

逃げられない町の慣れ合い 半ば投げやり 駆けど宛てない

外は嵐で誓う決別 君は温い部屋で眠ってる

不景気な地方自治体 おばあちゃんかかる特殊詐欺

週明け上がる水死体 大人のせいで子供死んだり

全て忘れて踊れと怒鳴る祭り囃子

平穏の舞台裏に 出番を待っている死神

市民を殴る警備隊 不正も手当たり次第

砲弾発射の耳鳴り 都市近郊の軍事支配

逃れられぬ町で 僕らせめて夢を見たい

誰もが背負う生き恥 だから濃い夕日の色彩

暮れる 暮れる 暮れる陽を止めろ

暮れる 暮れる 暮れる陽を止めろ

絶えない勇気は篝火 煌々と君の喉仏を照らす

だけど同時に苛立たしい ゆらゆらと揺れる陰が君を妬む

やむを得ずを選んだ手段に いつか選ばれる未来はぬかるみ

やるしかないをやっただけ 手も真っ赤に染まった朝焼け

従って右ならえ そうすればありつけた端金

そんで支払ったのは幸せ 卑下で埋める部屋の隙間風

こっからもう一歩 抜け出す為の微かな希望

君の笑顔で癒えた傷がある 次は必ず上手くやる

不景気な地方自治体 おばあちゃんかかる特殊詐欺

週明け上がる水死体 大人のせいで子供死んだり

全て忘れて踊れと怒鳴る 祭り囃子

不穏の舞台裏に 出番を待っている死神

市民を殴る警備隊 不正も手当たり次第

砲弾発射の耳鳴り 都市近郊の軍事支配

逃れられぬ町で僕らせめて夢を見たい

誰もが背負う生き恥 だから濃い夕日の色彩

暮れる 暮れる 暮れる陽を止めろ

暮れる 暮れる 暮れる陽を止めろ

ついに見えてきた出口 心なしか鳥たちもさえずり

上手くやれてる自分に驚く まさかあの日と地続き

このまま君と手繋いで 胸躍る期待と未来へ

けどすり抜けたこの手もしかして いつかの罪悪で血まみれ

いつか僕も数字になる スワイプで過ぎ去る記事になる

ここに存在する確かな想い 数行で語られる幻

泥沼の悲しみも どん底の喜びも

強奪された怒りも リライトできないシナリオ

不景気な地方自治体 おばあちゃんかかる特殊詐欺

週明け上がる水死体 大人のせいで子供死んだり

全て忘れて踊れと怒鳴る 祭り囃子

平穏の舞台裏に 出番を待っている死神

市民を殴る警備隊 不正も手当たり次第

砲弾発射の耳鳴り 都市近郊の軍事支配

逃れられぬ町で僕等せめて夢を見たい

誰もが背負う生き恥 だから濃い夕日の色彩

今日をスワイプ 今日をスワイプ あらすじに閉じ込められた生涯

今日をスワイプ 今日をスワイプ 忘れ去られた叫びと贖罪

今日をスワイプ 今日をスワイプ あらすじに閉じ込められた生涯

今日をスワイプ 今日をスワイプ 忘れ去られた叫びと贖罪

@amazarashi 秋田ひろむ

歌詞感想

スワイプというタイトルには、情報の中身を見ずに上辺だけ舐めてすぐに読み飛ばしてしまうネットに生きる現代人を比喩しています。

心から苦しみ抜いた人が起こしたアクションが、数行のネット記事としてデータ化されて処理されるリアル。そのリアルを一回の『スワイプ』で過去にしてしまうことのもどかしさが表現されていて非常に秀逸です。

そのアクション一つで過去にされてしまう事実に、無数の悲しい事実が詰まっているという行き場のない感情を、ここまで楽曲に乗せられた秋田ひろむにただただ関心します。

5分46秒という時間にその全てが詰め込まれているんです。言葉少なに表現すると「感嘆」。

歌詞は、amazarashiの歴史で最も過激といえます。

映画『ヴィレッジ』のストーリーから感化されて生み出された本楽曲は、国や都市で行われている不条理ともいえる現状をピンポイントに身近に感じる言葉で紡がれています。

不景気な地方自治体 おばあちゃんかかる特殊詐欺

週明け上がる水死体 大人のせいで子供死んだり

全て忘れて踊れと怒鳴る祭り囃子

@スワイプ

戦争や大量虐殺が行われている世界を語るのではなく、もっと身近に行われている日本国内の闇について真剣に受け止めてほしい。秋田ひろむの心の声がサビの歌詞からも感じ取れます。

そして、その闇に加担してしまった登場人物を描くことで、不条理の波をかき分けながらも必死に奮闘する姿が描かれているのです。

映画『ヴィレッジ』では、親が悪事に手を染めてしまった息子がゴミ処理場で働く姿が描かれています。村に根付いたしきたりや、地域の繋がりが強すぎるが故の閉塞感が主人公の心を壊していく様が息を呑むほどリアルに表現されているんです。

秋田ひろむが映画を鑑賞して生み出された楽曲なので、映画館へ足を運んでこそ『スワイプ』の真意に辿り着けるのではないかと感じました。筆者も今週中に映画館へ見に行ってきます。

まずは、秋田ひろむと同じ土台に立ってみる、そういう繋がりも大切にしたいなと思いました。

筆者が特に好きなのは、Cメロに向かうにつれてだんだんと過去のしがらみを払拭している経過が語られる歌詞です。

ついに見えてきた出口 心なしか鳥たちもさえずり

上手くやれてる自分に驚く まさかあの日と地続き

このまま君と手繋いで 胸躍る期待と未来へ

けどすり抜けたこの手もしかして いつかの罪悪感で血まみれ

いつか僕も数字になる スワイプで過ぎ去る記事になる

ここに存在する確かな想い 数行で語られる幻

泥沼の悲しみも どん底の喜びも

強奪された怒りも リライトできないシナリオ

@スワイプ

結局、過去の行いや生まれは払拭できないもので、それをすべて抱えて生きることを強いられている人がいるというリアルが投影されています。

amazarashiというバンドは、雨晒しの日々を送る人にこそ届く。

本楽曲で登場するような、あるいは映画『ヴィレッジ』で登場するような境遇を今まさに味わっている人が目の前にいたら、何も言わずに受け止めたくなる―

そんなクソみたいな人生でも、会社帰りに見る夕陽や一瞬見せる愛しい人の笑顔でなんとか明日を繋いでいる。心をギュッと鷲掴みにされているような気持ちになる歌詞です。

今日をスワイプ 今日をスワイプ あらすじに閉じ込められた生涯

今日をスワイプ 今日をスワイプ 忘れ去られた叫びと贖罪

今日をスワイプ 今日をスワイプ あらすじに閉じ込められた生涯

今日をスワイプ 今日をスワイプ 忘れ去られた叫びと贖罪

@スワイプ

 

MV感想

秋田ひろむ、横浜流星、藤井道人監督、新宮良平監督がタッグを組んだ本作品のMV。

物語は、映画『ヴィレッジ』の主人公である片山優のifストーリーを描いています。

親が犯罪の片棒を担いでいた事実について公の場で上司から攻められる主人公。地獄のような会社員生活を送りながらも、自分の心の奥底に眠る本心をゴミのような感情で蓋をしているんです。

心のゴミの中でゴミにまみれて踊るのは片山優本人であり、その事実に驚いて寝汗をかきながら飛び起きるシーンもグッと引き込まれました。

社会で生きる一人の人間として、上手くいかない日というのは必ずあります。それでも、心に暗い影を落としている人にとって、その一瞬の闇がトリガーとなってしまうんだなと思い知らされました。

最終的に心の奥底にある本心に触れてしまった主人公は、キャパシティーを超えてしまって刃物を手に取って上司を襲い逮捕されてしまいます。その取り押さえられる瞬間の片山優演じる横浜流星の鬼気迫る顔が脳裏に焼き付いて離れません。

横浜流星の演技がずば抜けてリアル。

目が泳ぐ演技や、すべてにおいて無気力で狂っていく様が心から苦しい。こういう経験を少なからずしてきた身なので、過去の会社員生活がフラッシュバックして胸がジンジン痛みます。

そして、そのリアルを映像に収める2人の監督のカメラワークと色彩。

すべてがリアル。

このMVは、映像作品としても高く評価されるべきものだと感じます。

多くの人に届いてほしいと心から感じる楽曲&MVでした。

 

 

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おわりに

今回は、amazarashiの新曲『スワイプ』についてレビュー解説記事となりました。

世界規模で他人事にできない戦争が勃発している昨今、世界から見たら規模は小さくても堰が溢れる寸前の闇を抱えた人が多く生きています。

その事実に無関心なままスワイプで情報を読み飛ばす人々。

そして、地方の町や村で実際問題深刻さを増しているもみ消しの跡。

大なり小なり、その「世界」にとって深刻な状況に置かれている人がいるという事実を無関心で終わらせていいのか?

秋田ひろむの訴えが、今までにないほどに攻撃的な歌詞で綴られた楽曲が『スワイプ』でした。

 

当記事を読んで「音や歌詞にどんな想いが込められているんだろう」と、少しでもamazarashiの世界に興味を持っていただけたら幸いです。

 

amazarashiは、2023年6月8日に東京ガーデンシアターでAcoustic Live「騒々しい無人」を開催します。『スワイプ』以外にも最新楽曲『アンチノミー』も披露される可能性があるライブです。

非常に熱い弾き語りライブになると予想できるため、気になる人はぜひチェックしてみてください。

リンク

amazarashi公式

amazarashi Acoustic Live「騒々しい無人」特設サイト

映画『ヴィレッジ』公式サイト

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