9mm NewAlbum「TIGHTROPE」全曲レビュー

「TIGHTROPE」について

2022年8月23日にリリースされた、9mm Parabellum Bulletの通算9枚目のフルアルバム。

「白夜の日々」「泡沫」「One More Time」「Spirit Explosion」のシングルを踏まえ、リード楽曲「Houtglass」「All We Need is Summer Day」を含んだ全10曲 35分。収録環境は過去作から基本的には変わりませんが、ドラムのセットは楽曲によって変更していたと Dr.かみじょうは生放送で語っていました。

『DEEP BLUE』と、『BABEL』の中間の雰囲気とメンバーが語っている本作は、まさに「赤」と「青」という相対的な色が交じり合った『極彩色』。それは、ただ単に派手なのではなく均衡に近いものを感じました。そう今回のアルバムは『極彩色』がテーマになっていて、アルバムジャケットからも極彩色の景色に一本の綱(タイトロープ)が斜めにかかっているのが分かります。多種多様な楽曲が35分という短い中で儚く燃え上がるアルバムになっており、非常にバリエーションに富んだアルバムに仕上がっています。

今回は、そんな『TIGHTROPE』の楽曲を全曲レビューしていきたいと思います。

(文字多めです!)

 

■ 内部リンク:9mmニューアルバム「TIGHTROPE」等最新情報公開!

■ 内部リンク:9mm新曲2曲やアー写解禁。カオスの百年Vol.16情報

 

 

収録曲レビュー

1. Hourglass

「All We Need Is Summer Day」と同時に先行配信された本楽曲は、アルバム1曲目から轟音と敷き詰められた音で魅せるロックナンバーです。32分音符高速ドラムで魅了する楽曲です。フィルインを無表情で叩きとおすかみじょうの顔が浮かびます。物悲しい雰囲気をギターの高温で表現していて、”轟音” だけど “悲しい” という2面性が表れています。

歌詞もとても暗く、今いる場所を底辺と見立てて砂時計の下側から落ちてくる砂を見上げている、逢えない人に想い耽る情景が浮かんできます。1曲目から物語性強めな楽曲が来ました。

生放送では出演者からも「アルバム最後みたいな曲だね」と言われていた楽曲です。たしかに今までのアルバム最後は、メロディアスながらも “詰め込み系” の楽曲が多い印象でした。メンバーはそのイメージを理解しながらも、本作の色合いを考えて1曲目にもってくることを決めたとのことです。後述するアルバム最終曲「煙の街」はスローテンポな曲となるので、アルバム構成を大事にして「Hourglass」を1曲目にもってきたのだと筆者は感じました。

MVは全体的に荒い映像に黒い背景。生放送では、千葉の館山 “砂山” で撮影されたことが語れました。「Living Dying Message」以来 2度目の砂丘でのMV撮影になります。Ba.中村のシャウトが披露される構成は、「Living Dying Message」にも近しいものがあるかもしれませんね。

深い 深い 奈落の 底から見上げた
白い 白い 生命は 一握りの砂
いつまでも いつまでも 覚えているよ
いつまでも いつまでも 覚えているよ

 

2. One More Time

先行配信シングルとして2022年5月9日にリリースされた7曲目の配信限定シングル。

結成18年にして心地よい音ハメを重ねて分かりやすいロックを叩き出した楽曲です。

全体的に軽やかな構成ですが、ディープなギター音のリフレインを入れることで楽曲を引き締めているのは流石です。一言でいえば「分かりやすい」。しかし、「One More One More Time…」というようにタイトルフレーズを繰り返して音ハメする曲は9mmとしては珍しいので、いつも通りの構成でも新鮮さを感じます。

何気に洒落乙なのが、1Aメロで間奏を挟んでからもう一度1フレーズ入れてからBメロに入る構成。ちょっとしたアクセントですが楽曲構成ではかなり光る部分です。

エフェクターがかかった菅原の声も楽曲にマッチしていますし、コーラスが大サビで入るのも盛り上げ曲として存在感があっていいですよね。特に筆者は、サビで地を這うように進行するベースラインが好きです。THE BACK HORNの時にも触れましたがバンドのベースラインが本当に大好きなんだ!

永遠を望むのもいい
大人気のない君がいい
One more, one more time もう一回
One more, one more time もう一杯
One more, one more timeじゃもったいない

 

3. All We Need Is Summer Day

「Hourglass」と同時に先行配信された楽曲で、今までの9mmを色濃く反映しています。

エフェクターで歪ませたギターを掻き鳴らす滝、反面爽快感のある菅原の声。イメージするは “夏の終わりの儚さ” を漂わせる花火。

サビ前と後で印象がガラッと変わる9mmの得意な構成です。サビ前は “All We Need Is Summer Day”の合唱が熱く、サビ後で裏声をつかった哀愁のある高音のヴォーカルがまとめます。2分43秒という密度に凝縮した表現力に、脳が楽しくなってしまいます。カップラーメンさえまだ完成しないような時間に、テーマパーク1周分詰め込みましたっていう存在感。ROCK IN JAPAN 2022でも披露され、グッと手ごたえのあるものになったでしょう。

PVは前面以外をディスプレイで囲まれたセットで撮影しており、今までの映像にはなかった “空” や “極彩色” に包まれる色鮮やかなMVとなっています。ディレクションを務めた河島遼太郎さんの “極彩色アクセント” がばっちり映えた映像です。

はじめようか 熱くなるのが
無理ならどうかしてる
はじけそうな 夏の本能は
目覚めたばかり

走り出して 止まれないのは
永遠だって それは決まって
いつも真夏日

 

4. 白夜の日々

2020年9月9日という9mmの日にリリースされた11枚目シングル。

バンド音をシンプルに出している名曲。

ギター、ベース、ドラムすべてが原点回帰したようにシンプルで格好いい。ギターをシンプルな配置にしたことでベースが映える演奏になっています。サビのシンコペーションも気持ちいいアクセントになっています。

冒頭の歌詞で「君に会えなくなって100年くらい経つけど」というフレーズがあるのですが、本当に久しぶりに会う『現在』のような瞬間に刺さるんです。「久しぶりー100年ぶりだね」という冗談のように笑い合えるような瞬間をライブで叶えている現在にピッタリとハマる楽曲かなと思います。

歌詞、メロディ、構成、どれをとっても素晴らしい完成度の楽曲です。

空は澄み切って 眩しすぎるんだ

いつか当たり前のような日々に流されて
すべて忘れても君に会いに行くよ

 

5. 淡雪

美しいインストからいきなりサビに入ることで一気に聴き手を引き込む構成に圧倒されます。アルバムの半分がリリース前から視聴可能だったので、視聴できない収録曲に期待が高まっていました。そして、その期待に完璧に答えてくれました。

歌詞は、桜が咲き始める冬の終わりに、出会い別れる2人の恋路を歌っています。

本楽曲で注目する点は、Vo.菅原の新境地のような歌い方です。やさしく歌い上げるメロは今まで聴いたことの無い雰囲気を持っています。はっきりとした歌い方ですが、鼻に抜けていくような発声で歌っているので楽曲の雰囲気にマッチしています。

歌詞も『だけど名残惜しむような冬の匂いも薄れて シュワリ 雪を溶かしたのが君の答えだから』の部分などに 卓郎の歌詞センスを垣間見ます。歌詞も過去形の言い回しなのが “もう終わった” 後というのが感じられて切ない表現ですね。

新しい季節ものの楽曲として、存在感を放ち続ける楽曲になることでしょう。

さよなら
今年もまた
桜が咲きはじめて
ぼくらが
出会ったのは
別れの季節だったね

 

 

 

 

6. Tear

アルバム「BABEL」のときのような演奏陣の怒涛の打ち込み、その中にも儚さを入れ込むアダルトな楽曲です。

1分56秒という短い楽曲ですが、音の重みと広がりが増している進化を感じます。アダルトな色気で歌い上げる菅原の声質の進化も一緒に堪能できるので、直近の9mmの進化を短い時間で堪能できる楽曲に仕上がっいるのではないでしょうか。個人的には、右耳にぶつかってくるドラムのロール音が心地良いので大音量で聴くことをオススメします。

引き裂かれても
忘れられても
絶えることない願いを

夜のしじまに
儚く散りたい

 

7. タイトロープ

アルバムタイトルになっている「危ない綱渡り」が表現されている楽曲。

全体的に高音のベースとギターで天界にいるような浮遊感を生み出しています。どこか不安な気持ちにさせるAメロから、開放的な縦ノリのBメロがサビを待ちわびていて素敵です。天界のような高い場所にいる速弾きリフは「ビルとビルの綱渡りを行うタイトロープ」を上手く表現しています。大サビで繰り返すサビの後半部分は、9mmファンの大好きな 「格好いい音の構成(メロディ)」が詰まっています。

Cメロはエフェクターで音を伸ばすことで神々しさが出ていますし、滝のコーラスが入ってきて壮大な世界ができあがっています。大サビに行く流れで短いフレーズながら疾走感のあるロック調に変調するのも格好いいポイントです。

歌詞を見てみるとギリギリのスリルを味わいたい変人ですが、危ない綱渡りをする人間の思考回路は常人じゃ考えられないほど研ぎ澄まされてると思いますし、それくらいの世界観がピッタリとハマる楽曲でもあります。生放送で菅原が飛行機の移動中に見ていたと語っていた映画「ザ・ウォーク」よりも、遥か高い場所にいるような浮遊感のある曲です。

9mmの新たな顔になるような楽曲でもあると思うのでライブがとても楽しみになる1曲でした。

この楽曲から「Sprit Explosion」に続くのもとてもエモいですね。

成り行きにまかせて
一か八かの二択で
ちょうどいいんだよ
愚かな俺には

運命にゆだねて
0か100かの二択で
ちょうどいんだよ
愚かな 俺には

 

8. Spirit Explosion

先行配信シングルとして2022/6/9にリリースされた8曲目の配信限定シングル。

Blazing Souls」のようにinstrumental曲として配信された歌詞のない楽曲。

まさに『つよい』という言葉がピッタリなほどラスボスミュージック。それでいて、Vo.菅原の「フーフー」というコーラスは壮大。なにより、一点の曇りすらない透き通るギター音が、この楽曲に命を吹き込んでいます。Cメロにはフラメンコ調に移行してアクセントも光ります。

なんて楽しい曲なんだ…。本当格好いい、黄昏ちまうよ。

「格好いいもの作ろう」という提案から始まったinstrumental曲ですが、それはまさに音への追求そのものですよね。

 

9. 泡沫 (Album Version)

2021年7月4日にリリースされた6曲目の配信限定シングル。もともとはライブ会場限定チケットとして販売され、ライブ終了後にデジタル配信が開始されました。

筆者も近年における9mmの楽曲の中でも大好きな曲です。

歌詞は、成就しなかった叶わない恋愛を歌った物語ベース。そこに揺らぎのある “聴かせる” 演奏陣が加わってジャパンロックの深みが滲み出ています。「TIGHTROPE」の中でも終盤に聴かせる楽曲というポジションにいるので、アルバム全体がグッと引き締まって完成度の高さに貢献しています。

特に存在感を出しているCメロのドロドロ感。この変調がアクセントになっていて何度もリピートしてしまいます。海外ファンからの支持も熱い一曲で、Youtubeのコメント欄もジャパンロックの独創的な雰囲気を支持している声が多く寄せられています。

生放送で語られたMVの撮影裏話として、一度収録した映像の手前に水槽を用意することで水の膜を張るようにして撮影したそうです。青い世界からCメロで赤に変わる、歌詞と楽曲の雰囲気が映像にリンクする演出も考えられていて素敵です。

どうして どうして どうして いつも
逃げられないんだ 傷付くことから
生まれて こわれて 消えゆく さだめ
受け入れられない 僕らのせいなの

どこまでも沈めてくれ 戻れなくても構わないから
僕たちは水の底で こわれてもまだ消えない泡

 

10. 煙の街

スローテンポの曲入りで、上品な歌謡曲のような進行の楽曲。

「あぁ 煙立ち籠める~ ああ 空の下で~」と始まった瞬間、終盤に轟音で掻き鳴らすロックに変貌するのだろうと思っていましたが、その流れのまま優雅にアルバムを締めくくりました。今までの9mmのアルバム最終曲というのはハイテンポで音数が多い楽曲がほとんどでしたが、「TIGHTROPE」のラストは衝撃のスローテンポナンバーです。この終わり方には驚きました。

生放送(カオスの百年)で 菅原は「煙の街を一番最後にするのは決まっている」というように語っていたので、この曲が最後に来ることに強い思い入れがあるように感じます。そして、その理由を聴けば聴くほどに噛みしめることになります。

一言であらわすのなら、”9mmが歌う歌謡曲”。前曲の「泡沫」は印象的でメロディアスな一面がありましたが、「煙の街」はまさに歌謡曲の構成に準拠しています。音の強弱やアフタービートを強く入れて音楽隊も楽器で歌うように演奏していることから、ミュージシャンとしても高いポテンシャルを打ち出した楽曲だと思います。

最後の「そっとまぶた閉じてみれば茜色に染まる部屋でした 目を開ければ煙の中」という部分を強く演奏することで感情の昂ぶりを解放するように歌っていますよね。今までの速弾きと轟音で打ち鳴らす9mmの世界観とはまた違う一面が開花していて嬉しい楽曲でした。

ああ そっとまぶた閉じてみれば
茜色に染まる部屋でした
目を開ければ煙の中

 

 

 

 

Amazon特典メガジャケを額に入れてみた

ということで、筆者はAmazonで予約したためメガジャケをゲットしました。

メガジャケは24cm x 24cmの大型の厚紙に印刷されたジャケット写真です。

IKEAでピッタリとはまる額縁も購入しているため部屋に飾ってみました。

↓↓↓額縁は以下の記事で紹介しているものになります↓↓↓

「出町柳パラレルユニバース」ジャケ&収録曲公開。WEEZERカバー楽曲も収録。

 

めちゃくちゃ良くないですか!?

正直、メガジャケ舐めてた

メガジャケと一緒にアルバム自体を飾ることができるので、アルバム自体がアートのようになります。アートワークを手掛けている河島遼太郎さんの作品を部屋に飾っているのと同じなので感動してしまいました。

IKEAの額縁は枠の中に小物を納めることができるので最高です。

アルバムを部屋に飾るというのも粋なので、Amazonのメガジャケも是非検討してみてね!

 

「TIGHTROPE」の購入はAmazonがオススメです。

発売日現在は、メガジャケ付きの初回限定版は品切れ判定です。

初回盤には18周年を記念した、今までのアー写をすべてポートレートが付いてきます。

購入は以下のリンクから!

 

 

あとがき

非常に色濃いアルバムで大満足でした。

今までの9mmのアルバムでもずば抜けて存在感のある楽曲が多かった。過去のアルバムも勿論クオリティの高いものだっけど、今回のアルバムは最初から最後まで外れ無しの一直線!

久しぶりにべた褒めするアルバムが登場してしまった。

これには、音楽大好きマンの筆者もニッコリ。

きっとこのアルバムを手に取る皆さんもニッコリ。

 

余談になりますが、歌詞カードにも河島遼太郎さんの手掛けたアートワークが何枚もプリントされています。タイトルごとに雰囲気の違うアートワークがあって面白かったです。

 

配信の音楽だけじゃなく

こうやって物理的に手に取ってみると、追加の発見や、嬉しい要素がありますね。

このアルバム大切にしよう…

ありがとう9mm…

 

 


 

9mm Parabellum Bulletは「TIGHTROPE」を引っさげて

Tour『Walk a Tightrope Tour2022』を開催します。

名古屋いきてぇぇぇぇ!

 

9月9日(金) Zepp Osaka Bayside
 OPEN17:30/START18:30
9月11日(日) Zepp Nagoya
 OPEN16:30/START17:30
9月19日(月・祝) Zepp Fukuoka
 OPEN17:00/START18:00
9月23日(金・祝) 仙台 GIGS
 OPEN16:30/START17:30
10月2日(日) Zepp Haneda
 OPEN17:00/START18:00
10月9日(日) Zepp Sapporo
 OPEN16:30/START17:30

 


 

 

ということで、9mmのニューアルバム「TIGHTROPE」のレビューは以上になります。

長い記事でしたが、お付き合いくださりありがとうございます。

 

 

AppleMusic

AppleMusicで本アルバムの楽曲を視聴&購入することができます。

 

リンク

9mm Parabellum Bullet公式サイト

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