当記事はART-SCHOOLの紹介ページです。
ART-SCHOOLとは
ジャンル
オルタナティヴ、インディー、グランジ、パワーポップ
結成
2000年
デビュー
インディー:2000年 ミニアルバム『SONIC DEAD KIDS』
メジャー:2002年 シングル『DIVA』
特徴
繊細で消え入りそうなヴォーカルでありながら、オルタナ/USインディー/グランジ/アコースティック等の様々な表現を魅せるバンド。
押したらそのまま倒れてしまいそうな第一印象とは裏腹に、他のバンドには無い「喪失感」と「ポップ」を両立させている音楽が特徴。「負」でありながら、それを正しく歌い上げる。
癖のあるバンドスタイルで有名だが、多くの名曲を残しており、『その時にしか出来ない音楽』を届けてくれる姿は魅力的なものがある。
メンバー
Vo&Gt. 木下理樹 (きのしたりき)

誕生
1978年10月14日
出身地
大分県佐伯市
楽器
ギター
人物
マッシュルームカットがトレードマーク。この髪型を崩したことは一度も無い。
地声とファルセットを巧みに使い分けた歌い方が特徴。
小学校の頃に兄から洋楽を聴かされるようになり、プリンスやメタリカ等のヘヴィメタルを愛好するようになる。その後、高校時代ではオルタナロックやグランジを聴くようになり、「下手なバンドも結構いるし、俺にもできるんじゃないかな」と思ったことをきっかけに音楽を始める。 (高校時代はオレンジクラッシュというコピーバンドでベースを弾いていた)
学生時代は完全な対人恐怖症であったが、音楽に出会ってから前向きに変わってきたとのこと。高校卒業後には作曲を始めて上京することになる。1999年にテレスコープレーベルからソロアルバムを発表し、その後ライブのサポートをしていた日向秀和(現:ストレイテナー)、大山純(現:ストレイテナー)、櫻井雄一、でバンドを結成することになる。
「負を表現してポプラリティーを得たい」というスタンスであり、自分自身が常にアウトサイダーであることを求める。その全ては、「弱い人たちのところまで音楽を届けたい」という想いからである。
しかし、彼自身がストレスをため込みやすく、内向的になりやすい。Gt.戸高がいなかったら音楽活動を続けていけなかっただろうとインタビューで語っているほど。
バンドでは主に作詞を担当する。歌詞は、「コンドーム」「貪って」「犯して」「身体だけ~」「射精」など、普通のバンドではなかなか使用しない言葉をふんだんに使用する。
Gt.戸高賢史 (とだかまさふみ)

誕生
1982年7月22日
出身地
大分県佐伯市
楽器
ギター
人物
2003年に結成メンバーの日向と大山が脱退したことを受け、2004年に木下がバンドのファンとして交流があった戸高を誘い加入。
ART-SCHOOLの音楽を支え、多くの印象的なメロディを生み出してきた。
エフェクター製作を手掛けており、「Phantom FX」という自身のブランドからペダルをリリースしている。
ギターマガジンでのコラム連載や、凛として時雨や細美武士らのサポートワーク等、多くの仕事をこなしている。
2014年にはCrypt Cityに加入。2015年にはMONOEYESを結成した。
サポート
Ba. 中尾憲太郎 (なかおけんたろう)

Dr. 藤田勇 (ふじたいさむ)

Dr. 櫻井雄一 (さくらいゆういち)

ART-SCHOOLの楽曲
本バンドの音楽を、数曲ピックアップしながら
ミュージックビデオを踏まえて解説していきます。
1期:「SONIC DEAD KIDS」~「LOVE/HATE」
櫻井(ドラム)、日向(ベース)、大山(ギター)が所属していた時代を第一期とします。
2000年にアルバム”SONIC DEAD KIDS”を123RECORDSからリリースしたことでインディーズデビューを果たした彼らは、精力的な作曲&ライブ活動を行います。王道のコード進行でシンプルな楽曲が多いですが、印象的なフレーズなどを多く残しています。
2001年9月にリリースした1stシングル “MISS WORLD” は収録された4曲すべてが名曲であり、インディーズバンドながらレーベルが大きくプッシュを行うバンドとなりました。
Vo.木下のどこか危ない消え入りそうな声質は、静かにも荒々しいという言い表せないART-SCHOOLの世界観にマッチしていました。1期の曲調はどれもオシャレで、意図していたかは分かりませんが曲の構成も非常に高いものでした。
特に大きな評価を受けた3rd miniAlbum “シャーロット.e.p.”は、伸びのあるギターと、主張の激しいベース、ライブで盛り上がること間違いなしの力強いナンバーが多く収録されています。「プール」「FADE TO BLACK」「I hate myself」等の楽曲は今でもライブの定番です。
ミュージックビデオが存在する楽曲「FOOLISH」は今見ても本当に素晴らしい完成度です。轟音の中に美しさがあるバンドとして、音楽関係者にも強く印象付けることとなった一枚でしょう。
2002年10月には、メジャーデビュー曲として「DIVA」をリリースします。
Vo.木下は「レパートリーの中で一番ポップだからデビュー曲にした」と語っており、その言葉の通り【勢いと儚さが両立されている鋭い楽曲】で話題を呼びました。更にミュージックビデオの意味不明さも合わさって、彼らの人気は確立されていきました。
1stFullAlbum「REQUIEM FOR INNOCENCE」、2ndFullAlbum「LOVE/HATE」には多くの名曲が収録されることとなります。しかし、2003年には音楽性の違いと、新たな挑戦をしたいという理由から日向(ベース)、大山(ギター)の2名が脱退することとなります。日向はその後、ストレイテナーに加入し、大山もバンドを経由しながら後にストレイテナーに正式加入します。
2人が脱退する前の楽曲「SWAN SONG」は、明るいメロディながらも歌詞には辛辣な想いを込めている楽曲となっています。ミュージックビデオも主に、木下と櫻井が出演するシーンで構成されており、2人が極力映像に出てこないものになっています。
腐り切った感情で
僕は今日も生きている
どうでもいい、でも一度
心の底から笑ってみたいんです
苦しくて逃げ出して
心ならとっくに焼け落ちた
はいつくばってみっともないな、
でも今日はそんな風に思うんです
メンバーの脱退はあったものの、1期の楽曲は人気が高く、現在のライブでも歌われる定番曲を多く輩出した時代です。素朴だけど染入る楽曲は、今では出せない雰囲気があります。
2期:「SCARLET」~「Anesthesia」
新たに戸高賢史(ギター)と宇野剛史(ベース)が加入しました。
メンバーが4人いる状態を2期とします。
曲調や楽曲制作に1期から大きな違いはないものの、戸高が加入したことによって多彩なエフェクターや、王道のロック以外の路線も開拓し始めることになります。ここからのART-SCHOOLの音楽は非常にオシャレで、耳に残る名盤を多く生み出すことになります。
2004年の4thminiAlbum “SCARLET”は、リリースとして大きな売り上げとはなりませんでしたが、ART-SCHOOLの代表曲が誕生した記念すべきリリースになります。木下の、歌詞は今まで通り抽象的でありながらも的をえている問いかけをしており、疾走感がありながらもどこか切ないメロディがマッチします。
この頃から単独ライブでツアーを行ったり、彼らの音楽性にミスマッチとも思える夏フェスにも精力的に参加していくこととなります。
そして、翌年の2005年には初のタイアップ楽曲となる「あと10秒で」をリリース。この楽曲は多くのファンを魅了し、バンドマンを魅了し、ART-SCHOOLの名前を世に知らしめた楽曲となります。古くから親交のあるASIAN KUNG-FU GENERATION主催のNANOMUGENフェスに参加した際、記念のアルバムには「あと10秒で」が収録されています。(映画:パイルドライバー主題歌)
筆者は、2期初頭の音楽は、1期の頃のように芸術的な楽曲をバンドスタイルで魅せることに特化しているように思います。2005年にリリースしたアルバム「PARADISE LOST」や、2007年にリリースしたアルバム「Flora」など、アルバム毎にコンセプトを絞って美しい音楽を生み出す様は、本当に目を見張るものがありました。
ミュージックビデオがある楽曲で筆者が好きなものは「SWAN DIVE」です。
「カノン」や「光と身体」など、美しいナンバーがこの時代は多く、耳に残るメロディと、また聴きたくなる音楽作りが光っています。バンド名のART-SCHOOLからも感じる通り、真っ白のキャンバスに多彩な色を付けていくような音楽が多いです。
この頃は、Vo.木下の声質も低温で落ち着いた雰囲気となっており、Gt.戸高の持ってくる楽曲にピッタリとハマった声で多くの楽曲を生み出していました。
2008年にリリースした”ILLMATICBABY”から、2期後半の時代に突入します。
今までの雰囲気とはガラッと顔色を変えているため異質な時代でもあります。
バンド音で聴かせる楽曲よりも、打ち込み等で普段の楽曲とは違う音を重ねる手法を取ります。これは、新たな世界を開拓することにもなりましたが、古くからのファンは全く違うART-SCHOOLの世界観に戸惑うことになりました。
賛否両論ありますが、 “ILLMATIC BABY” のリリースでバンドはより大衆的になり、様々な層を取り入れることに成功しています。現に当時のオリコンランキングは25位と、今までのセールスの中でも高い結果でした。
この時代では、粗削りなバンド音を極力クリアな方向にもっていく取り組みがされています。アンサンブルが洗練されたというのが正しいでしょうか。
ファンとしては、そういう綺麗さは求めていなかったかもしれません。しかし、この時代もART-SCHOOLの歴史として必ずプラスになった時代なのです。
この “ILLMATIC BABY”発売後、2009年4月にドラムの櫻井が脱退を発表。2009年5月には新メンバーとして鈴木浩之が加入します。
また、2008年10月15日には、ベストアルバム “Ghosts & Angls”をリリース。

「斜陽」から「IN THE BLUE」までの楽曲を広く収録。
各アルバムの主要楽曲が入っているため、2008年までのART-SCHOOLの軌跡を辿るにはもってこいの内容となっています。個人的に、彼らの音楽はアルバム収録曲や、カップリングにこそ名曲が多いため、初心者向けのようで初心者向けではないと言えます。
後述する、B-Sideベストの方が名曲揃いのような気もしますが、シングルを網羅しているという点でまぎれもないベストアルバムです。
筆者も友人に紹介する時に、本アルバムをオススメしました。しかし、評価は渋い印象…
彼らの音楽を語る上で、シングルカットは一部の表情しか読み取れません。
アルバム収録曲まで聴くことで、本当の顔、本当の良さ、を知ることができるバンドなのだと評価できます。

2009年にリリースされた5thFullAlbum “14SOULS”は、独特な世界観こそ薄まってしまったものの、完成度の高い楽曲が多く収録されています。
この時代は2期後期と呼ばれ、イロモノでブロックパーティな楽曲が多く、2000年初頭のようなロックに全ての能力値を全振りしていた頃のような音楽とは遠くかけ離れていました。昔のように心にグッと刺さるような曲は減ったけれど、ロックバンドとしてはあるべき進化をしている楽曲が多いです。ギター、ベース、ドラムどれを取っても。
” 14SOULS “の中でも、この曲をオススメするのは違うかもしれませんが。
筆者がとにかくハマって頭を空っぽにできた映画「ロボゲイシャ」の主題歌「LOST CONTROL」に触れさせてください。。「片腕マシンガール」や「電人サボーガー」という異質の爆笑映画を多く手掛けてきた奇才、井口昇監督の作品の主題歌となっています。片腕マシンガールが傑作として称されていますが、このロボゲイシャも負けていません。
暗殺組織に誘拐された主人公が、身体をロボに改造されてしまい暗殺家業に手を染めることになる。しかし、組織の被害者の会の人々に心動かされ改心していく…?。というハチャメチャなストーリー。胸を張ってオススメはできませんが、人生に一度は見て欲しい作品です。色んな意味で。
肝心のART-SCHOOLの「LOST CONTROL」は、メロやサビは王道の運びで進行する特徴の薄い楽曲ですが、戸高ギターのクオリティと音ハメは非常に完成度の高いものに仕上がっています。やはり、昔のような棘は少なめで、大衆向けのノレる一曲に仕上がっています。バンドの出す音やアクセントも良いので、この時代のアートは、様々な音楽を吸収して『地下』から『地上』へ這い出るための音楽を生み出しているように感じます。
一時期は『こんなのART-SCHOOLじゃない!』と、ファンである筆者でさえぼやいたものです。今となっては2期後半の彼らの音楽が好きで好きでたまりません。
その後、リリースされた2期後半の9th miniAlbum “Anesthesia”。
バンドのスタイルは1期を彷彿とさせるものがありながら、”14souls”のようなエレポップさも混ぜ合わせて音の層は増えていきました。
リード楽曲となった「ecole」はART-SCHOOLらしさが詰まった楽曲でした。ギターの音をキラキラと鳴らしたり、間奏で音を小さくしたり…様々な手法が光ってる名曲です。ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤は、「シガーロス(アイスランドのロックバンド)みたいだ」と絶賛しています。
そして、度重なるメンバー衝突から、2011年末には宇野剛史(ベース)と鈴木浩之(ドラム)が脱退。
これを機にART-SCHOOLは木下と戸高の2名が残るのみとなりました。
3期:「BABY ACID BABY」~「In Colors」
2012年3月、木下と戸高での新体制を発表し、サポートメンバーとしてナンバーガールの中尾憲太郎、MO’SOME TONEBENDERの藤田勇が加入。ランクヘッドのDr.となっていた櫻井雄一が一時参加という形で加入しました。
同年8月にリリースされた6thFullAlbum “BABY ACID BABY” はグランジ感強めのコンセプトを打ち出して、バンド音をそのまま届けるナチュラルな音質にこだわったアルバムとなりました。
重低音の轟音が響き渡るベースのリード、アクセント強めのドラムという新体制の破壊力をこれでもかと魅せるライブパフォーマンス。まさに新生ART-SCHOOLが始まった瞬間でもありました。
しかし、この時期を境に木下の声が不調となり、以前のように透き通った音を届けられなくなっていきます。”BABY ACID BABY”の頃はグランジ感にマッチしていたので雰囲気付けにもなっていましたが、2013年3月にリリースした10thMiniAlbum “The Alchemist”では声質が大きく変わっており、全く違う世界観で音楽を届けることになりました。
しかし、それはマイナスではなくプラスの方向へ彼らを運んでいきました。
“The Alchemist” 収録の名曲「フローズンガール」。
木下の声は全くの別人のようになっていましたが、バンドが見せた音は変わらないものでした。木下自身が、中尾や藤田に触発されて新鮮な音作りができたと語っているとおり、この雰囲気は今までに出すことのできなかった新しい雰囲気です。
凄く狭い世界の、凄く狭い層に刺さる音楽を、また新たに開拓した名盤だと感じます。
「フローズンガール」を普通のヴォーカルが歌ったら、ただの綺麗な曲になってしまう。木下や戸高、中尾、藤田が集まったからこそ生み出せた傑作です。
前作の「BABY ACID BABY」を聴いて、今後の展開がどうなるのか様子を見ていた筆者ですが、「フローズンガール」を聴いて今後のART-SCHOOLが大きく変わると確信しました。
そして、名盤となる7thFullAlbum “YOU”が2014年4月にリリースされます。
兼ねてから交流のあるASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文をプロデューサーに迎え、ゲストボーカルに環ROYを招いた「革命家は夢を観る」。
後藤がお互いの良い部分を協調させるように、スイッチングヴォーカル構成で作成している本楽曲は、今までART-SCHOOLの届かなかった層へと音を届けるきっかけとなりました。
本アルバムでは、激しくも入念に練られた音が魅力です。木下の歌詞も攻撃的な単語をあまり使わず、世界観に沿うようにしています。まさに多くの人間が多くの意見を出し合って作った過程が読み解けるほどの素晴らしいアルバムでした。
前作から一気に雰囲気の変わった彼らの姿に驚いた人も多かったようですが、ART-SCHOOLの本質…というより、木下の本質が上手く表現されているアルバムに仕上がっていると感じました。
タイトル曲の「YOU」も、優しい掛け合いが素敵な楽曲となっています。
傷つけ、傷ついてきた彼らが魅せる、丁寧で優しい世界。最高です。
変化するものは多いけれど、それでも応援する価値があるバンドだから。ずっと応援しちゃうんだよなぁと、一ファンからの率直な感想が飛び出すほど(筆者の!)
2014年12月30日、活動休止を公式ホームページ上で発表。2015年には活動休止前のラストライブを新木場STUDIO COASTにて行いました。
そして、2015年2月13日のCOUNT DOWN JAPAN15/16にて復活ライブを行い
2016年5月には8thFullAlbum「Hello darkness, my dear friend」をリリースしました。
自主レーベルを運営しながらの作曲活動にも関わらず、ものの4カ月で19曲の新曲を生み出した木下。彼はどん底にいるときもあるが、そこから生まれる音楽はとても優しい―
活動休止前のライブではほとんど声が出ていない状態だった木下ですが、少しずつ声を本調子に乗せてきました。本作は、声質も美しい世界観の一つにしてしまうような楽曲作りがされています。そのアレンジはとても良いものでした。
昔のようにハツラツとした声は出せていないように思えますが、年齢を重ねると同時にメンバーの中に湧いて出てくる優しさや哀愁までも、そのすべてが滲み出ているアルバムになっています。
大人向けの楽曲が多く収録されている印象です。
よく、第1期や第2期前半の楽曲ばかり評価するファンがいるけれど、そういう人たちには年齢を重ねてから見えるバンドの表情も読み取って聴いてもらいたいですねぇ。本当に良い曲多いので。
2017年1月25日には、B-sideBestAlbumとなる”CemeteryGates”をリリース。

シングルやe.p.等のカップリングに収録された楽曲を収録した本アルバムは、ベストアルバムよりもベストらしい素晴らしい収録曲の数々です。
先に記載した、ベストアルバムよりもこちらの方がベストアルバムに近いかも…
「ニーナの為に」や「ステートオブグレース」「レモン」「カノン」「LILY」「その指で」等の名曲が一枚になっているので。初めて彼らの音楽を聴くという人にもオススメできる名盤です。
- ニーナの為に
- ステート オブ グレース
- 1965
- プール
- I hate myself
- レモン
- LILY
- SKIRT
- LOVERS
- MEMENT MORI
- JUNKY’S LAST KISS
- LUCY
- カノン
- LITTLE HELL IN BOY
- LOVERS LOVER
- それは愛じゃない
- その指で
- Ghost of a beautiful view
近年の楽曲
そして、2018年3月には9thFullAlbum「In Colors」をリリース。
衝動的で激しくノレる「Dreaming Of You」に、相対的に優しい情景が浮かぶ「OK&GO」という2つのミュージックビデオ楽曲。この完成度の高さはそのほかの収録曲にも言えることで、まだまだ色あせないART-SCHOOLの音楽に対する情熱を感じずにはいられません。
リード楽曲の「スカートの色は青」や「In Colors」など、激しいロックを奏でなくとも伝えたい情景を届ける。そういう音楽を第3期のメンバー全員が理解して一緒に並んで歩いてくれている世界はとても素敵です。木下の声質も今では最高だと思えます。
第一期の彼らの音楽を観た後に、現代の彼らを見ると瞼が熱くなります。めちゃくちゃ不安定で、めちゃくちゃ暗い、でもファンにとってはめちゃくちゃ明るい。それが令和の時代になっても続いてるってすごい事ですよ。現代の音楽に路線を合わせつつも、自分たちの持ち味を理解して、率直に届けてくれるバンド。そういうバンドは多くはありません。
ここまでに何度もメンバー同士でぶつかって、脱退・加入を繰り返して歩んできたART-SCHOOL。
木下はTwitterで「そろそろお金が無くなってきたので音楽作ります」とか言う時がありますが、本質は音楽が好きで好きでたまらないんじゃないか!と…笑
2022年には、待望のe.p.パッケージ『Just Kids』をリリース。
以下の記事で楽曲をレビューしていますので、気になる方はチェックしてみてください。
■ ART-SCHOOL新譜「Just Kids」楽曲レビュー!
筆者がオススメする楽曲5選
どうにかこうにか悩みに悩んで、筆者がオススメする楽曲5選をお届けします。
- 左ききのキキ
- プール
- 刺青
- 光と身体
- カノン
「左ききのキキ」
2007年9月19日にリリースしたミニアルバム「左ききのキキ」収録。
筆者が一番好きなミュージックビデオかもしれない。
最初は普通に飯食ってる家族の風景なんだけれど、櫻井がはちゃめちゃな行動をとり始めるというぶっ飛んだMV。これが最高に好き。
ライブでバリバリロックを掻き鳴らしている当時、このMVのギャップが大好きでした。
木下の抽象的な歌詞は、どこか別世界に連れて行ってくれるような物語性があってとても素敵です。「左ききのキキ」も言葉選びがとても素敵で、それでいて儚くて、アートの特殊な世界観を物語っているような気もします。
このドアを開けると 生まれ変わる
何もかも忘れて 生まれ変わる
それならば僕は此処にいるよ
それならば君と此処にいるよ
君が僕に笑った
子供みたいに笑った
いつか こんなメロディや
透明な君の髪も
聞こえやしない日が来るよ
映りもしない日が来るよ
「プール」
2002年4月5日にリリースした3rdMiniAlbum「シャーロット.e.p」収録。
短い歌詞の中に上手く情景を映しいれた歌詞が魅力的です。
耳に残るメロディも思い出と一緒に脳裏に焼き付いているほどです。
どこか悲しく、儚い雰囲気のあるART-SCHOOLを堪能できる一曲です。
サンデイ この水の中でいつまで呼吸ができるの?
サンデイ 忘れないでって 乾ききって 彼女は笑って
You are the beautiful one いつも硝子みたいな君に溶けてた
それだけ、それだけさ
「刺青」
2005年2月9日リリースの5thMiniAlbum「LOST IN THE AIR」に収録。
彼女のことを想っていたけれど、すれ違いや自分のせいで戻らない関係になってしまった主人公を歌った楽曲。
当時の木下の歌詞には、男女関係というものが色濃く出てきます。
“身体を重ねる” 表現や、 “射精” “コンドーム”などの表現もしばしば…
その中ではとてもマイルドで抽象的な歌詞ですが、その核心に触れないギリギリの歌詞が聴く人の想像力を掻き立てます。
そして、なんといっても忘れられないメロディ。
この時代のART-SCHOOLは耳が楽曲を覚えてしまうほど印象的なものが多いです。
「馬鹿な僕らはきっと~身体以外に何も~」は気付けば口ずさんでしまいます。
自然と口ずさむ曲というのは、それはつまり良い楽曲ということ!
シャンプーの匂い
刺青の模様
まつ毛の長さと
折れそうな足首に見とれた
馬鹿な僕等はきっと
身体以外に何も
あの日世界はきっと
色を失くしたんだ
馬鹿な僕らはきっと
身体以外に何も
硝子ごしにいつも
君が手を振っていた
いたんだ
「光と身体」
2006年4月19日リリースの、7thSingle「フリージア」収録。
ギターのアルペジオに、静かに進行していく楽曲構成が非常に美しい一曲。
歌詞もやるせない思いが全開で、押しつぶされそうな心の内が現れています。
ギター1本で弾き語りを行うライブでも非常に映える名曲なので、コードや楽譜などを購入してコピーする人も多い一曲ですね。聴く人それぞれ、浸れるポイントが随所にある完成度の高い楽曲だと思います。
分かりやすいコード進行ですが、これが率直に身体に染み渡る理由でしょう。そういう細かいところまで練られていたかは分かりませんが、現に深く思い出に根付いている筆者のような人間がいますから。
そのまま3曲目の「キカ」に繋がるのも素敵なポイントです。戸高が歌う楽曲「キカ」とも合わせて聴いてみてください。
そうやって いつの間にか
誰よりも 嘘が上手になった
揺らいで ただ汚れて
手を伸ばしたって いつも いつも
空には青 君には名前と祈りを
あの先の その向こう側へ 放つ様に
「カノン」
2005年6月22日にリリースした、「あと10秒で」収録曲。
「あと10秒で」は収録されている楽曲全てが名曲であるため、かなり選択に迷った楽曲が多いのですが、自分の人生に深く根付いている楽曲である「カノン」に決めました。
当時、混乱と崩壊を繰り返していたバンドが、まさに輝きを取り戻したアルバムの代表的な収録曲です。本アルバム収録曲の「汚れていたい」「LITTLE HELL IN BOY」そして「カノン」は、どの時代と比較してもずば抜けて飛び抜けた楽曲だと思います。
どことなく冬を感じさせるような、それとも秋か。アルペジオやカッティングが自然と季節まで連想させてくれる楽曲なのです。アコギの旋律もまたいい味出しています。
とはいっても、彼らの音楽は海外ロックバンドの旋律を上手く自分たちに取り入れているため、どこかで聞いたことあるようなメロディだったりしますが…この「カノン」という楽曲はそんなこと考えさせないほどに美しい旋律です。しかし、どこかもの悲しい。そして寂しい。
ART-SCHOOLの音楽の美しさは、聴いた後に残る『もの悲しさ』や『切なさ』なのかもしれない。
くしゃくしゃの枯葉踏んだ
君の息は白くって
彼はそれに見とれた
そして気付いたんだ
どれだけ愛し合ったって
いつかの様に抱いたって
二度とはこんな美しい
日には戻れない事に
気付いた 気付いた 気付いた 気付いた
ART-SCHOOLの新旧を楽しめるプレイリストも公開中
以上で、ART-SCHOOLの紹介は以上となります。
本ページは随時更新していきます。
また当サイトでは、彼らの音楽に対するページや、その他バンドの関連記事を上げていきます。
直近では「応援するバンド」の紹介ページを作成していきますので宜しくお願いします。