syrup16gの魅力を余すことなく紹介するページ

当記事はsyrup16gの紹介ページです。

syrup16gとは

ジャンル

オルタナティヴ、インディーロック、ニューウェイヴ、シューゲイザー

結成

1996年

再始動

2014年

デビュー

インディー:1999年 ミニアルバム『Free Throw』

メジャー:2002年 アルバム『coup d’Etat』

特徴

独特の存在感を持ち続ける日本のスリーピースロックバンド。

一枚のベールが掛かったような決して晴れ渡ることのない世界観が魅力で、人間の芯に触れるような楽曲が特徴。

バンドが生み出す音楽はどれも非常に暗く、一周回って明るい。

心の負の面が前面に歌われるが、その『リアル』が聴く人を魅了する。

 

多くの音楽関係者から賞賛されており、Mr.Childrenの桜井和寿からは「天性」と評価。

BankBandではsyrup16gの「Reborn」をカヴァー。

BUMP OF CHICKEN、スピッツ、NUMBER GIRL、ART-SCHOOL、GRAPEVINEなどのバンドと深く交流があり、音楽性の高さを評価されている。

 

メンバー

Vo&Gt. 五十嵐隆 (いがらしたかし)

※ 撮影:Yuki Kawamoto

誕生

1973年6月1日

出身地

埼玉県浦和市

楽器

ギター

人物

作詞作曲のすべてを担当する。

『替えのきかない天性の声』とも評価されるヴォーカリスト。

彼が持った人間味あふれる感情や、心の闇が楽曲に色濃く反映される。

しかし、その終着点は一言では語れない世界を生み出す天性のフロントマン

小学校時代から音楽に没頭し、当時は主に洋楽を聴いていた。高校在学中に地元の喫茶店のバイト代でギターを購入したことで、自身がフロントマンになる夢を追いかけることになる。

高校時代の学園祭で飲酒したことが原因で停学となったり、大学時代にバリで出会った民族音楽「ケチャ」に衝撃を受けて引きこもりになったりと衝撃的な学生生活を送る。レコーディングエンジニアになるために発起したが、『嫌いな音楽も仕事にするのがキツイ』という理由で就職を断念した。まさに、人間味の塊。

専門学校時代に、Dr.中畑と共に前身バンド「SWIMS」を結成。当時はギター担当だが、ボーカルがバンドを辞めたことで仕方なく今もボーカルを続けているとインタビューで語っている。

解散してから再結成するまでは、「犬が吠える」名義で活動。数曲の未発表楽曲を公開した。当時の楽曲はsyrup16g名義でアルバムに収録されている。

ASIAN KUNG-FU GENERATION主催のNANO-MUGEN FESのオファーがあった際は『僕たちはそういうの無理で…』と断りを入れている。

ライブがとにかく苦手、というより人前に出ること自体が病む。そんな人物。

Ba.キタダマキ (本名:北田万紀)

※ syrup16g公式より

誕生

1969年7月4日

出身地

静岡県

楽器

ベース

人物

フェンダージャズベースを愛用し、ほとんどの楽曲を指引きで演奏するのが特徴。

ライブでもTV収録でも一切口を開くことがない寡黙な人物。

ファンの支持は厚く、愛称は「マキリン」

ジャズベースの太い高音が気持ちいい。

50歳を超えた今でも、ビートルズのような毛量の多い髪型にしたり、白髪交じりでショートカットにしたりとオシャレな一面を魅せる。寡黙な姿も非常に格好良く、筆者も大好きなベーシスト。

サポートベーシストとして様々な音楽活動に参加する機会があり、ホフディラン、Salyu、宇宙まお、宮本浩次などのアーティストのサポートベーシストとして参加している。

Dr.中畑大樹 (本名:なかはただいき)

※ syrup16g公式より

誕生

1974年7月25日

出身地

青森県

楽器

ドラム

人物

長い金髪を振り乱しながら叩く、動きの激しいドラムが魅力。ちなみにインディーズ時代は黒髪。

ライブではよく上半身裸になり大声で叫ぶ。獅子かな。

荒々しいパフォーマンスとは裏腹に可愛い内面も魅力

ドラムの練習は姉が聴いていた松田聖子の楽曲で行っており、アニメが大好き。特にアニメはジブリ作品が好きで、実家にドラムセットが無ければ代々木アニメーション学院に行っていただろうとラジオで語っている。

VOLA & THE ORIENTAL MACHINE結成時から期限なしレンタル移籍加入という形でドラムとして参加しており、後に正式メンバーとなっている。その後も、tacica, チリヌルヲワカ, PERIDOTS, plenty, 宇宙まお, ハルカトミユキ, 清春など、多くのバンドのドラマーとして活動している。

 

 

 

syrup16gの楽曲

本バンドの音楽を、数曲ピックアップしながら

ミュージックビデオを踏まえて解説していきます。

暗雲立ち込める中、多くの名曲と共に始動

「明日を落としても」「You Say ‘No’」

モーニング娘では「Loveマシーン」、GLAYでは「Winter,again」がヒットした1999~2000年。

その頃に颯爽と現れたバンド “syrup16g” 。

結成当初は細々とライブ活動を行っていたが、2002年のメジャーデビューを境に大型フェスや雑誌に取り上げられることになる。認知度を急激に高めた彼らは、ライブごとに新曲を披露するというハイペースで活動していくことになります。

Vo.五十嵐の “顎鬚” に “サングラス” に “黒服”は当時のトレードマークとなっており、一貫したスタンスと音楽スタイルは、若手バンドの中でも一目置かれる存在となっていました。

※ 初期の “顎鬚”“サングラス”“黒服” の五十嵐

 人前が苦手で、恥ずかしさを紛らわすためにこの格好になったとか。

 

1999年のインディーズ1stミニアルバム「Free Throw」には既に名曲が多く収録されており、メジャーデビュー後に再レコーディングを行う楽曲が多く含まれています。

「翌日」「Honolulu★Rock」「真空」はまさに王道のロックに重きを置いていますし、「明日を落としても」「SonicDisorder」では、彼らの醍醐味ともいえる心をえぐるような救いようのない歌詞で聴く人に寄り添う存在感を魅せていました。

特に筆者は「You say No」が好きで、何かあるたびに聴いています。

雲追いかけ とうとう目が覚めた

苦悩なんて随分エラそうだな

死のうたって 当分無理そうだろう

散らかった部屋片そうかな

You Say ‘No’

風邪こじらして 大丈夫そうな振りして

気取ったって ぎこちない日々さ

プリン買って 帰ろうかな今夜は

お金なんて あんまいらないのな

You Say ‘No’

また、「Free Throw」のブックレットにはBUMP OF CHICKENの藤原と直井が写っており、親交の深さを垣間見ることができます。

「生活」「負け犬」

2001年10月5日に、インディーズとしての1stフルアルバム「COPY」をリリース。

目いっぱい暗い曲を、自然と歌うスタンスはこの頃から定着してきたと言えます。

音楽性の観点で見れば、後に代表曲となる「生活」を見ても非常に自由度の高い作曲センスを披露しています。普通のロックバンドだったら、サビを盛り上げるためにサビ前にBメロを持ってきますよね。syrup16gはそんな概念は一切無く、Aメロ→Aメロ→サビ→Aメロ→Aメロ→サビ→Bメロ→Aメロ→サビ→Cメロ。という自由な構成を見せています。

以降の楽曲でも同様ですが、『その楽曲が一つにまとまっていれば良い』『こうしたいからこうする』という型にハマらない構成が多いです。

初のミュージックビデオが作られた楽曲「負け犬」。

バンドの一発目となるMVで「程なく人生をそつなく終えれば、ヤクザも官僚もロックのロクデナシも、みんな負け犬でしょう?」というサビを書き上げた。意図してないだろうが、まさに正反対から攻めた正真正銘のロックで話題を呼びました。

頭ダメにするまでがんばったり

する必要なんてない

それを早く言ってくれよ

程なく人生を

そつなく終えれば

ヤクザも官僚も

ロックのロクデナシも

みんな負け犬でしょう

収録曲でいえば、「(I can’t) Change the world」「土曜日」など、比較的弾きやすいコードにも関わらず耳から離れないメロディが多い印象です。同世代のバンドでもなかなか『根っからの暗さ』を出すことは難しく真似のできないものがあり、唯一無二の存在感を既に放っていました。

「天才」「幽体離脱」

2002年にはメジャー1stアルバム「coup d’Etat」がリリース。

「神のカルマ」や「汚れたいだけ」「ソドシラソ」などの名曲を収録した本作は、syrup16gの中でも非常に大きな機転となるアルバムでした。

上記の楽曲はベースがメロディ楽器の役割を担う試みがされており、ロックバンドとしての在り方について挑戦的な姿勢が見て取れます。しかし、当時のベース佐藤元章がやりたい音とは違ったため意見の食い違いから、彼を脱退に追い込む原因となってしまいました。

それでも、多くのファンや同業者の賞賛を受けたアルバムであることには変わりなく、ストレイテナーのVo.ホリエアツシは『後にも先にも、同年代の日本のバンドの作品からここまでの衝撃を受けたことはないと思う』と語っています。

音と韻の踏み方が完璧で歌詞も率直な楽曲が多く、当時のライブハウスでは、対バンバンドを目当てに来ていた客をも巻き込む盛況ぶりとなっていました。「coup d’Etat」の最後に収録されている「汚れたいだけ」は、彼らの楽曲の中でも名盤中の名盤であり7分を超える大作でした。

気怠い印象からは想像もできないほどに、楽曲に対するインスピレーションやイメージが強い五十嵐。ここから数年で精力的に楽曲制作を行い、異常なまでのハイペースで楽曲制作を行うことになります。

3年たらずで5枚のフルアルバムをリリースしていくのです。

「Reborn」「センチメンタル」

2002年に発売したメジャー2枚目のフルアルバム「delayed」。

アルバムとしての売り上げは並みでしたが、代表曲となる「Reborn」が”生まれた”瞬間です。

ライブでは重要な場面で歌われる楽曲であり、2013年に行われた五十嵐のバンド復帰生還ライブではオープニングナンバーとしても演奏されています。

長い年月が経ち、Mr.Childrenの櫻井和寿の耳にとまった本楽曲はBankBandとしてカヴァーされることになりました。彼らのカヴァーによる逆輸入としてsyrup16gの存在が公に出たともいえる作品であり、大きな功績を残した楽曲と言えるでしょう。

アルバム「delayed」には、親交のあるBUMP OF CHIKENのVo.藤原基央がコーラスに参加している楽曲「水色の風」も収録されています。静かな脱力感があり、抽象的な歌詞は聴く人のイメージをそそります。

「ex.人間」

2003年3月19日にリリースされた、3rdフルアルバム「Hell-See」。

本アルバムは、コロムビアの地下にある部屋の一室でレコーディングされており、全体的に轟音と荒い音響が目立つアルバムでした。

当初はシングルをリリースする予定で予算とスケジュールが組まれていましたが、五十嵐が「シングルは出したくない」と短期間で15曲のレコーディングを決行した驚愕のアルバムです。結果、1500円というシングル価格で15曲収録したアルバムを出すという商売としてはあがったりな状況になりました。

2010年にリマスタリングされる前の「Hell-See」は、ライブ音源を収録したDisc2が付録された限定版が発売されており、ネットオークションでは高額で取引されています。

アルバム「Hell-See」には「イエロウ」「不眠症」「I’m劣勢」「正常」「吐く血」など、未だにライブで高い人気を誇る楽曲が多く収録されています。

「リアル」「Mysong」

ここへきて、2003年9月17日にメジャー初シングル「パープルムカデ」をリリース、その3か月後にはシングル「My Song」をリリース。どちらも4~5曲の収録曲があるため、ものの数か月でアルバムとシングル合わせて20曲以上の楽曲を手掛けたことになります。まさに異常です。

カップリング曲にも多くの名曲があり、筆者も大好きな「(I’m not)by you」や「ハミングバード」もこの時代の楽曲です。

2004年3月23日にはシングル「リアル」がリリース。カップリングの「うお座」共に高い評価を受ける楽曲となり、音もクリアなものになっていきました。そして、シングル「I・N・M」を2004年4月7日にリリースしてものの数日…4月21日には4枚目のアルバム「Mouth to Mouse」がリリースされます。

シングル楽曲を多く収録したアルバムとなっていますが、タイトル楽曲「Mouth to Mouth」や「Your eyes closed」など静かながら斬新な名曲が揃っていました。

この時期のsyrup16gは出す曲すべてが違うアプローチで、楽曲の構成も面白いものばかりと光り輝いていました。

独創的で音楽性の高い五十嵐の生み出す音楽に、惚れ込んでしまった人、人生に疲れてしまった人、様々な境遇のファン層があり、知名度の高いバンドのひとつに肩を並べることとなりました。

しかし、当の五十嵐本人は近年のアルバムの出来に満足できておらず、「まだ毒が吐きたらねぇ」と次回のアルバムへ今まで以上に力を注ぐことになります。

第一期シロップ完結、セルフカバーの新録を納めた「delayedead」

「翌日」

2004年9月22日にリリースされた6枚目のアルバム「delayedead」。

本アルバムは、1stアルバム「Free Throw」に収録された4曲(翌日、Sonic Disorder、真空、明日を落としても)と、それ以前に制作された曲を再録することで制作したアルバムになっています。

「前頭葉」や「Heaven」など得意の攻撃的な楽曲も多く含み、「Breezing」では全英詩曲という今までの流れにない楽曲も収録しています。

ただし、1stアルバムに収録されていた4曲は初期の頃の方が非常に秀逸な雰囲気を含んでおり、リアレンジ後の楽曲はファンの求めていた音楽とは離れたものでした。特に「明日を落としても」は、キーも演奏も大きく変更されており、全くの別物になっています。

ここから、syrup16gの音楽は少しずつ歪んでいき、メンバー同士の関係も徐々に悪化していってしまいます。

「翌日」には新たにミュージックビデオが制作されることとなり、一つの節目となりましたが、MV内での仲睦まじい姿が少しずつ遠のいていく切なさを噛みしめることになります。しかし、本楽曲はsyrup16gだからこそ生み出せる味があり、五十嵐だからこそ名盤にできた楽曲だと思います。ネガティブが逆に良い意味に働いてくる『彼等だからこそ響く音楽』の代表曲だと思います。説得力が違うんですよね。

ベストアルバム2枚をリリース

2006年には、「動脈」「静脈」のベストアルバム2枚をリリース。

動脈には荒々しさを出した楽曲を収録し、静脈には静かに廻る楽曲を収録。当時、入手困難となっていた1stアルバム、2ndアルバムの楽曲をそのまま収録していたりと、選曲はとてもいいラインナップとなっています。

彼らの代表曲が多く収録されているベストになったため、このベストアルバムをsyrup16gを知るきっかけとしてもいいかもしれません。

当時のファンは、バンドメンバーの不仲などを知る手段もほとんど無かった為、このベストアルバムは更なるバンドの通過点だと認識していたでしょう。しかし、メンバーの中ではこのベストアルバムはバンドの終わりを意味しており、短いバンド人生の幕引きへの準備を進めていたのです。

バンド解散と、全てを注げなかった「syrup16g」

「ニセモノ」「さくら」

2008年1月30日にリリースしたアルバム「syrup16g」。

解散前のラストアルバムである本作。

収録当時は、ドラム、ベース、ギター、歌入れがすべてバラバラの状態で行われており、メンバー同士がほとんど会うことなく作られていったアルバム。五十嵐の父親が亡くなったことや、メンバーの不仲が重なり、極限状態でリリースまでに至った作品です。

特に1曲目のリードトラック「ニセモノ」は、五十嵐の心の内のすべてが歌詞に込められており、表に出さない自暴自棄の心を覗かせています。

理想を夢見てきた いいだろう

途中までいい感じだった

破滅の美学なんかを利用して

いざとなりゃ死ぬつもりだった

結局俺はニセモノなんだ

見世物の不感症

拾った想い吐き出して

愛されたいの まだ

アルバム収録曲も今までのsyrup16gにあったキレや独創性というものが薄くなっており、メロディは秀逸にも関わらず虚空のような虚しさを纏った曲が多く収録されています。

それでも、名曲は収録されている。それは、「さくら」です。

どんな状況でも音楽に対する本質を失わなかった、そのすべてが「さくら」には詰まっています。脆くなっていた五十嵐という人間の姿をそこに見ましたが、本楽曲はまさに儚くて、それでいて優しい歌詞が乗っており、音楽が心から好きな彼自身の本質的な部分も見て取れます。

そして、syrup16gは2008年3月1日の日本武道館ライブを最後に解散。ライブにおいて披露された多くの新曲は未発表のままとなりました。

「生還」として再度3人が集ったライブ

解散後は、五十嵐は「犬が吠える」名義で新たにバンド活動を継続していました。そこでは、再結成後に収録することになる「赤いカラス」等の名曲が生まれていました。犬が吠えるは、五十嵐が自分の存在に疑問を感じ始めたことで、目立った活動をすることなく解散することとなりました―

「犬が吠える」も解散した五十嵐は、今までの貯金や印税などで数年間ほとんど音楽活動無しで生活することになります。ただし、その怠惰な状況もソロライブの決行を通して変わっていくことになります。

2013年3月1日、五十嵐がソロ名義で「生還」とて開催したライブには、syrup16gのメンバーであるキタダ、中畑の姿がありました。ライブ中はメンバーの口からsyrup16gの名前は一切出ませんでしたが5年ぶりに3人で行ったライブとなりました。

「生還」では、再結成後のアルバムに収録されることとなる「赤いカラス」がメンバーで演奏され、その後の展開に続いていくきっかけとなります。

 

「syrup16g」の再結成

「生きているよりマシさ」

2014年6月27日、syrup16gの再結成を正式に発表。8月27日に8年ぶりとなるオリジナルアルバム『Hurt』を発売しました。

『一人きりでいるのが長すぎて急に話しかけられると声でないよな』

『基本地面ばかり見て歩くから、たまに人と視線合うときょどっちまうよな』

という歌詞から始まる8年ぶりの新曲「生きているよりマシさ」は、解散後の五十嵐がずっと抱えていた不和のようなものが全て込められている楽曲でした。タイトルや歌詞から感じられる闇のような部分は、本当はそのすべてを払拭したいと願う自分自身の心の叫びで、その感情を理解できるファンの心に非常に刺さるものでした。

ミュージックビデオも薄暗い前半から、Cメロの決意ある歌詞に載せて、だんだんと明るくなっていく後半に痺れます。再始動の明暗を表現している非常に素晴らしいものでした。

顔はちょっと怖いけれど、これはいつも通り!

「Hurt」の収録曲はどれを取っても完成度の高い楽曲ばかりで、五十嵐の天性ともえいるセンスを感じるものばかりでした。様々な理由があったとは思いますが、彼らの再スタートが正しいものであったことは間違いありません。

ライブDVD「再発患者」

2015年5月20日にリリースされたミニアルバム「Kranke」のライブツアー等を納めたLiveDVD「再発患者」が2016年にリリースされました。

Hurtのリリースツアー「再発」と、Krankeの2015年ツアー「患者」が収められており往年の名曲が、年月を経て演奏される興奮が収められています。

 

近年の楽曲

ミュージックビデオは2016年11月16日にリリースされたアルバム「darc」で止まっています。「darc」では、違法薬物の依存症から回復するという意味通り、不協和音と不安定なメロディを全面的に取り入れながらも、優しく包み込むような音楽作りがされています。

MVが制作された楽曲「Deathparade」は、ギターの不協和音寸前のギリギリ感と、衝動をそのまま歌に乗せた従来の作曲スタイルが見て取れます。

このアルバム以降、またも五十嵐の「ちょっともう疲れた」「やるけどさぁ」という気分屋な態度が出ているため、過去のsyrup16gそのものを見ている雰囲気になりました。それでも、五十嵐自身『嫌い!』と公言したライブ活動なども行っていますし、それなりに過去の自分を払拭したい意気込みは感じられます。

2017年11月8日にリリースされた「delaidback」は、収録曲のほとんどを今まで発表してこなかった未発表曲の再レコーディングで埋めるという、彼等らしい収録スタイルが垣間見えました。演奏は分かりやすく、それでいて美しい世界観を取り入れたアルバム構成となっていて名盤ともいえるでしょう。音源化していなかった「赤いカラス」や「透明な日」「upside down」などの楽曲が、歌詞の変更やアレンジを加えて収録されています。

2019年には、全国5都市を回るライブツアー「SCAM:SPAM」を開催。2020年2月の追加公演は新型コロナウイルスの影響で延期となりましたが、ニコニコ動画などの媒体を通して無観客ライブとして実施されました。

 

2021年11月には、すべて新曲で構成されたライブ「202111」を開催。

そこから1年後の2022年11月には、5年ぶりのニューアルバム「Les misé blue」をリリースしました。

ライブで披露された12曲の楽曲がブラッシュアップされ、新曲2曲を追加したこだわりのアルバムに仕上がっています。

【音作りに誠実な5年ぶりのアルバム】syrup16g「Les misé blue」の全曲解説レビュー

 

syrup16gとの出会い

syrup16gとの出会いは、自分が中学生の頃。

立ち寄ったCD屋さん(タワレコかな)で、「このアーティストが凄い」というピックアップが組まれていたのが気になりつつも見送っていました。その後、ネットで調べてインターネット上で「HELL-SEE」を聴いてハマったのが出会いです。

当時は特にCDは買わずに、TSUTAYAで借りてMDに録音したり、パソコンに入れたりするくらいの付き合いでした。過去のアルバムを借りるようになってから、その音楽性の良さにどっぷりハマって長い付き合いになったという経緯です。

当時の筆者は、情緒不安定メガネ君だったので彼らの音楽が刺さりに刺さりました。

がっつり彼らの音楽を聴く頃にはsyrup16gは解散していて、「なんでこんなに良いバンドを、解散する前に知れてなかったんだ!」と当時の子供だった私でも悔やんだ思い出があります。

2012年には、ニコニコ動画で彼らの作業用BGMを何回か投稿して、若気の至りのような活動もしてしまいました。

それから数年、彼らの最新情報を随時追っていたわけではないのですが、Twitterの記事で「syrup16gが再結成する」という話題が飛び込んできたのです。そのニュースを見たとき飛んで喜びましたし、毎日関連ツイートや、最新情報を追うようになりました。

そこからは、過去の楽曲を集めたり、映像作品を購入したりと心から応援するバンドになっていきました。今では心から尊敬するバンドのひとつです。

 

 

 

 

筆者がオススメする楽曲5選

どうにかこうにか悩みに悩んで、筆者がオススメする楽曲5選をお届けします。

言わずもがな、syrup16gの曲は名曲ばかりです。更には聴くタイミングや、境遇によってその曲の価値や存在感も大きく変わってきます。そんな中で、どうにか押さえておきたい楽曲をピックアップします。

また、上記で取り上げた楽曲以外をピックアップします。

  • メリモ
  • 汚れたいだけ
  • 冷たい掌
  • 不眠症
  • (This is not just)Song for me

 

「メリモ」

アルバム「Mouth to Mouth」収録曲。本アルバムからは「ハミングバード」と非常に迷いましたが、「メリモ」はまさに彼らのロックを象徴した曲なので選びました。疾走感の中にある混沌がsyrup16gの持つ苦い後味のあるロック。まさにその象徴かと思います。

ふてくされたように歌い上げる五十嵐が、当時の青臭さと合致する最高の楽曲です。

昔のライブ映像を見ても、今のライブ映像を見ても、放心状態で歌うのは変わらなくて本当に良い味が出ている楽曲です。

生きんのがつらいとかしんどいとかめんどくさいとか

そんな事言いたくて えっらそうに言いたくて

二酸化炭素吐いてんじゃねぇよ

先端恐怖症なんで

最先端は興味ないです

絶対コレは買いの絶対って何?

まさに、五十嵐ワールド全開。大好き。

 

「汚れたいだけ」

アルバム「coup d’Etat」収録曲。アルバムの最後を飾るのにふさわしい、ヴォーカルはスローテンポでありながら、楽曲自体はハイテンポという非常に珍しい構成の楽曲。とにかく暗い歌詞と、暗い世界観はsyrup16gだからこそ歌い上げることのできた楽曲。

これは、他のバンドじゃ出せない味。

ここまで悲しい歌詞を書ける五十嵐の心境が不安になるほどですが、本人はいたってケロッとしています。深淵のような暗闇に一気に没入して曲作りができる彼の代表曲といってもいいでしょう。とにかく、悲壮感のある歌詞とメロディが凄い。もう何を言っていいのか分からないので『凄い』の一言に尽きます。

この楽曲に救われた人も多いと思います。

バックで鳴り続ける、エフェクターで歪ませた「ふぁーん」と鳴るギター音も特徴的ですね。

どうでもいいのに

あなたの嘘に傷つくんだろう

誰とでも寝ればいい

食欲あるくせに

食べるのが好きじゃないなんて矛盾してるよなあ

脳が思考の停止を

始めたら そこから

何か落とした

探してみたってもう

見つけられるのは自分の手

 

「冷たい掌」

再結成後にPVが作られた楽曲としても存在感がありますが、この楽曲は本当に歌詞とメロディの構成が文句なしに美しい。素晴らしい。

構成はいたってシンプルですが、後半の不協和音に近い折り重なった音、更に一番最後の「パッパラパラッパ」というフレーズは、今までのsyrup16gにない情景の表現方法で新鮮でした。

この楽曲に魅力を感じるか、感じないかで、このバンドの魅力に気付けるか否かの線引きができると思います。解散から再結成を経験して、ここまでの伸びしろがまだあるなんて脅威的です。

冷静になり状況把握して

反省もほどほどに 貴方を忘れた

三階建ての 階段上って

眺める景色が すべてだったから

自然に振舞おうとしていた

怯えていた

分かり合えないものなんて無いような振りして

冷たい掌 握り直して

過去へ 連れてって

冷たい掌 握り直して

未来へ 連れていこう

 

「不眠症」

アルバム「HELL-SEE」収録曲。

syrup16gの混沌とした世界観が十二分に表れている名曲。

過ちを犯した自分自身、忘れたくても忘れられないものばかりで、その重圧に耐えられなくて空洞の日々となっている様を描いてる。不眠症になった当人の心の内が歌詞に「これでもか」と現れています。

終盤は歌詞がどんどん崩れていき、「うるせぇてめぇメェー!」というとんでもないフレーズまで飛び出します。音ハメの極致にたどり着き、気持ちのいいままに最後は暴言から「メェー!」まで飛び出すシロップの良さを堪能するにはいい楽曲でしょう。

ヌルッと終わっていく楽曲ですが、非常に評価の高い楽曲で、好きな楽曲TOP5内に入った時期もあるほど支持を受けています。歌詞カードのまま歌っていない五十嵐のそのスタイルも踏まえて大好きです。

こんな気持ちはもういいよ

くるったままの遠近法

夜になるたび waiting for

のた打ち回って不眠症

さよなら さよなら

さよならって聞こえねぇよ

さよなら さよなら

さよならって聞こえないね

もう遅ぇかねぇねぇ

うるせぇ てめぇ メェー

うるせぇ てめぇ 寝れねぇ

もう遅ぇよねぇ

 

「(This is not just)Song for me」

アルバム「HELL-SEE」収録曲。

「HELL-SEE」から2曲も入れてしまった…いいよね。

この曲は、とにかく何気ない一日の風景が魔法のように素敵で素晴らしいことを歌っている『めちゃくちゃ明るい曲』です。

捉え方にもよるかもしれませんが、耳に残る明るい曲調も相まって、荒んだ彼らの楽曲の中に灯る光のような存在感があります。最近の楽曲にも明るい曲は多いですが、この当時のことを想うと、実に素敵な気持ちになります。

アルバムではこの次の楽曲「月になって」「ex.人間」の流れが完璧すぎるので、アルバム全体の構成を踏まえて印象に残っている楽曲のひとつになったとも言えます。やはり「HELL-SEE」は名盤だなぁ。

そのマッチを一本擦るたびに

This is not just song for me

その花を一本摘むたびに

This is not just song for me

爪先で蹴飛ばして

石コロを転がして

昨日覚えたばかりの

歌を口ずさんで

家に帰る

そんな魔法が今は何故

手品みたいに思えるのだろうね

 

上記楽曲は以下のAppleMusicで視聴&購入できます。

■ AppleMusic:syrup16gの5選プレイリスト

 

 


 

 

以上で、syrup16gの紹介は以上となります。

本ページは随時更新していきます。

 

また当サイトでは、彼らの音楽に対するページや、その他バンドの関連記事を上げていきます。

直近では「応援するバンド」の紹介ページを作成していきますので宜しくお願いします。

 

リンク

syrup16g公式

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