THE BACK HORN 13thアルバム「アントロギア」レビュー

15年以上お世話になっているロックバンド THE BACK HORN から、4/13(水)に13thアルバム「アントロギア」が発売されました。

アルバムタイトルの”アントロギア”は、古代ギリシャ語で<花を集めること>を意味し、詩文を集めた詩集を意味する言葉に由来するそうです。本記事では、アルバム制作の経緯や楽曲を聴いた筆者の感想を踏まえてレビューさせていただきます。

 


 

アルバム制作の経緯

本アルバムは、2020年5月の緊急事態宣言の中で作成されたものであり、メンバーそれぞれが音や声を重ねてリモート収録するという新たな試みがありました。さらにVo.山田将司の咽頭ポリープ摘出手術もあったため、バンド活動としても、ひとりの人間としても激動の中での制作だったでしょう。
しかし、長くファンとして応援している身としては『このバンドはそんな逆風も追い風になる』と確信していたし、それは現実となりました。

 

Vo.山田将司のポリープ手術から初の音源収録となった「瑠璃色のキャンパス」は期待を大きく上回るクオリティでした。メンバーそれぞれが音を合わせながら録音して生み出した”リモート収録”でしたが、その曲は復活を望むファンにはもちろん、彼らを知らない人たちにも届き、pv再生回数は18万再生(2022/04/13現在)となりました。

 
楽曲を待ち望んでいた私も、ファンも、全員がTHE BACK HORNの復活を確認できた瞬間となり、本当に興奮したのを鮮明に覚えています。
メンバーのインタビュー記事を抜粋しますが『 塞ぎこんでしまう今だからこそ鳴らすべき希望がある 』という言葉からも、このアルバムにかけた思いが伝わってきます。
以降の先行配信楽曲「希望を鳴らせ」「ヒガンバナ」「ユートピア」も非常に高い完成度と評価を受けています。

Gt.菅波栄純は、eijunとしてソロの音楽活動を本格的にスタートさせ、そこから培った技術も”アントロギア”の楽曲にプラスされていますし、フジテレビ系列のトーク番組「アウトデラックス」のアウト軍団として活動することも…いえ、これは音楽にはプラスされていないかな(笑)

とにかく、いろんな激動の中で制作されたアルバムであり、それぞれの楽曲が個性豊かな一輪の花となり<花束>へと昇華したアルバムです。

 

 

 

 


 

楽曲解説

以降は、”アントロギア”に収録されている楽曲を筆者の感想を踏まえながら解説していきます。
あくまで楽曲に対する一つの意見 (見方) として捉えていただけましたら幸いです。
 1. ユートピア
 2. ヒガンバナ
 3. 深海魚
 4. 戯言
 5. 桜色の涙
 6. ネバーエンディングストーリー
 7. 夢路
 8. 疾風怒濤
 9. ウロボロス
 10. 希望を鳴らせ
 11. 瑠璃色のキャンパス
 12. JOY

 

1 . ユートピア

今までのバクホンからは珍しいダークなラテン調がアルバムの一曲目となります。
「アルバム毎に顔が変わるバクホンらしい」スタートですね。
楽曲はGt.菅波の持ち込みで、アレンジしながら山田が歌詞を付けていく制作だったようです。アルバムのスタートが岡峰ベースから始まるというのも新鮮で気持ちが上がります。
メロの部分はシンセのように歪ませたベースとカッティング、サビからの4つ打ちに合わさる音楽隊の音が気持ちいい!

特に注目してほしいのは、Cメロの岡峰ベース。
三味線のようにスラップで高速弾きしています。アラビアンテイストをベースの音で出すのは異次元です。

PVの教会も”理想郷”とマッチしてますよね。
スポットライトとメンバーの表情や動きを上手く重ねていて格好いいものに仕上がっています。ディレクターの田辺秀伸さんに拍手!
一曲目から、これなら間違いないよな!

 

2 . ヒガンバナ

2曲目はバクホンの得意とする、不穏な雰囲気からサビで疾走するロックソング!
彼岸花の花言葉は「悲しき思い出」ですが、「情熱」や「独立」という意味もあり、悲しみから立ち上がってほしいという思いが込められています。疾走感のある曲調は、直球で想いが伝わってきますよね。Dr.松田の歌詞がぐっと刺さります。

 ~ 涙の跡が消えなくても君は美しいから
  命のかぎり咲き続ける君は情熱の花 ~

PVの構成は非常にシンプルですが、『これ!これでいいんだよ!』とファンを唸らせるものでした。静と動というバクホンの良さが際立つ楽曲でもあるので、メンバーの動きに合わせた残像やブラー、ノイズの演出はベストマッチでした。

youtubeでベースの岡峰がヒガンバナを弾いてみた動画が上がっています。
これだけでもとにかく凄いので一見の価値ありです!

 

3 . 深海魚

歌謡曲+ボサノバのような曲調で、どこか懐かしい雰囲気もあります。
以前の楽曲でいうならイキルサイノウに収録されている「孤独な戦場」が近いでしょうか。ちょっとアダルトな歌詞がピッタリと合うリズムです。

 ~長い髪を絡ませ泳いでく
  君の身体にしがみつく
  溶け合うほどに 何度も
  鱗剝がれて落ちてくまで 求め続ける
  僕ら闇を彷徨う魚~

アルバム一曲目のユートピアのようにムーディに進行するメロは、聴けば聴くほどハマっていきます。

4 . 戯言

曲頭からトロンボーンという、今までにない試みが光る曲です。
eijunとしてソロ活動していた菅波が楽曲作成の中でいろんな分野を取り入れていったことも大きいでしょう。音楽隊の演奏もワンポイントで技を入れてきて面白い。

メロに合わせるように言葉遊びを入れていたり、
『ざ!ざ!ざ!戯言 蹴飛ばして~』
『頭湧いちゃってイッちゃってSHOWTIME』

という音ハメが、ジャズ調のメロにマッチしているのは拍手喝采です。
ジャズロックに音ハメをするという荒業を見せてますが、ここまでハマっているのは
山田が持ち込んだ曲に、アレンジしながら崩した歌詞をハメ込んでいく菅波のセンスが光ったということでしょう。やはり菅波栄純はただモノではない。

5 . 桜色の涙

桜の季節というのは、別れの季節でもあり、新たな旅路の季節でもあります。
この曲からは、どこかそういう哀愁があります。

楽曲の構成は、”路地裏のメビウスリング” と “君を隠してあげよう” の間でしょうか
前曲の”戯言”からはうって変わって切ない曲のため機転となっています。
音楽隊も王道の進行であり、シンプルな楽曲にすることで雰囲気が作られています。

6 . ネバーエンディングストーリー

カントリー調に外れなし!
スキップしているような優しい曲調に、優しい将司の声が乗る♪
歌詞もとても素直で…真っすぐで満点!
将司が作詞/作曲を一人で行っている楽曲のため、ソロ活動として出していたときの優し表情がある曲です。将司の根底にある優しさが前面に出ている(涙)

バクホンといえば獰猛な野獣のように猛るイメージですが
こういう優しい楽曲のクオリティの高さが光っていて泣けるんですよね。
また、ギター一本で路上演奏を見せてほしい (*’▽’)b

 

 

 

7 . 夢路

タイトルからも連想できるように、伸びのいいサビが気持ちのいい曲です。
Cメロのベースソロが浮遊感のあるエフェクタを入れてあるのも特徴です。
サビでは、メンバーのハミングが入っているのも印象的な楽曲です。

こういう曲をバクホンが作るようになった時代の流れをひしひしと感じますね。
初期の人を殺してしまいそうな殺意に満ち溢れていた彼等からは考えられない。
いや…この浮遊感から、次の「疾風怒濤」でカオスの渦に落とすのがTHE BACK HORN
 ありがとうございます!

8 . 疾風怒濤

「希望を鳴らせ」のB面としてリード配信された疾風怒濤。
岡峰ベースのうねりから始まる混沌のリードギター。まさに炸裂する菅波ワールド。
言葉遊びという名の、秀逸な言葉選びでバクホンの世界にどっぷりハマります。

“がんじがらめ” 等もそうでしたが、菅波の混沌の引き出しの数が多すぎる。
疾風怒濤はライブでも映える、決定的な一打になったでしょう。

MVはリリック調で、ライブ映像に歌詞を重ねている構成。
まさに疾風怒濤の如く、歌詞と演出が画面を埋め尽くす演出で〇。
いや~、音ハメの極致ですよこの曲は (笑)

9 . ウロボロス

混沌とザワザワとした胸騒ぎからスタートするメロはまさにウロボロス。
ウロボロスといえば、尻尾を丸呑みして丸く輪になった蛇。意味は「生と死」…
「生と死」という概念はTHE BACK HORNにとって根底にあるものです。
この楽曲は、私たちが思うよりもっと彼らにとって深い意味がありそうです。

楽曲は、ドロドロとしたメロから、サビで一気に突き抜けるロックナンバー。
サビには『OH OH』というコーラスがあるため、ライブでも映える一体感のあるナンバーとなること間違いなしです。
更に、Cメロでは一気に厳かなシンセの音で”情景泥棒”のような雰囲気に転調します。

 ~先生、最近「夢を持て」って言わなくなりましたよね

という歌詞がバクホンの過去からリンクする部分で面白いところでもあります。

転調から一気にぶち上げる大サビの解放感は、アントロギアでも最高峰。
早くライブで聴きたい!高く評価できる楽曲です。

10 . 希望を鳴らせ

雑味一切なしのストレートなロックナンバー!

 塞ぎこみがちな今を生きる人たちに
 そしてこんな現代だからこそ
 希望を口に出して叫ぶんだ!

というTHE BACK HORNの届けたい気持ちがストレートに表現されたリード曲です。
ベースやドラムは要所要所で光る難しいアクセントを入れていますが、それでも素直に心に響くロックナンバーというのは、現在の音楽シーンでは珍しいと思います。
この音を聞いて、再度このバンドの凄みを実感しました。
アルバムの終盤に持ってきたのも、混沌からの解放を感じてたまりません。

PVの撮影場所は、八ヶ岳中信高原国定公園
標高2013メートルの断崖絶壁の山頂ということもあり、突き抜ける解放感は別格。
メンバーも「さみぃ…さみぃよ。こえぇ…」と吐露してるメイキング映像は必見。

11 . 瑠璃色のキャンパス

アルバム制作の経緯でも少し触れていますが、この曲がアントロギアの起点と言ってもいいでしょう。
まさに、THE BACK HORNの再出発地点でもあり、ひとつの転機にもなった曲です。
一本筋が通って目指す場所が合致していれたからこそ作れた曲だとメンバーも振り返っています。この曲が完全リモートで制作されたと思うと本当に凄いですよね。

山田将司がリードして作詞/作曲を行った曲であり、この曲に込めた思いはとても強いものだと思います。
この音楽と共にあれば、何度でも、何度でも生まれ変われる。
将司のコメントが、とても響きます。

私のお気に入りはCメロで高温が伸びる菅波のギター!
高温と歪みのエフェクターがめちゃくちゃ気持ちいいんだコレが!
弾いてる本人も軽く昇天しかけてるんじゃないか(笑)という程、イケる音に何度聞いても興奮します。(変な意味じゃないです)

12 . JOY

昔のバクホンを知っている人ならば、タイトルに「JOY」と付けるのは考えられなかったでしょう。『運命複雑骨折』や『墓石フィーバー』からは考えられないほどに『JOY』です! 今の彼らは研ぎ澄まされてますからできるんです!

バクホンのアルバム最後の曲は、ほぼすべてが優しく開放感のある曲です。
『JOY』も本当に心が洗われるように清々しい曲となっています。
なぜ、こんなに綺麗なロックナンバーを生み出せるのか(´;ω;`)
コーラスも美しく、それでもロックとして格好いい唸るポイントを押さえている。
ベースの難易度も高く、ドラムの技も随所に光っています。kaminote混乱してます!

 ~温もりを感じながら
  ささやかな幸せを知って
  その喜びを分け合うように
  ずっと生きてゆこう
  君に何を伝えよう
  生きる喜びそれ以外に
  長い夜が明けたその時は
  きっと会いにゆく

アルバムの締めくくりにふさわしい一曲です。

 

“アントロギア” の全曲レビューは以上となります。

同じ気持ちになってくれたり、この記事からTHE BACk HORNに興味を持ってくだされば幸いです。

また、本アルバムにはBlu-rayライブ映像が付属しているため購入を是非。
「自由」「シュプレヒコールの片隅で」「君を隠してあげよう」とライブ演奏が珍しい曲のライブ映像が多いため必見です。

 

 

 


 

 

AppleMusic

 

リンク

■ THE BACK HORNオフィシャルウェブサイト

https://www.thebackhorn.com/

■「アントロギア」特設サイト

https://www.thebackhorn.com/news/p/detail/s_id/2/d_c_id/1/id/22997/

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